美食と自然の国。日本が持つ「ハイエンドな旅先」としてのポテンシャル

Teshima Art Museum、Photo:Ken'ichi Suzuki


例えば、日本は良い美術館や自然などの体験コンテンツがあっても、そこを訪れた後にどこで食事をし、泊まればいいかの情報がばらばらに日本語で存在していて、旅を設計しにくい。「見て、食べて、買って、泊まって」が線で結ばれていないことが、ハイエンドトラベルの受け入れに精通している方々から課題として上がっています。

受け入れ側の根本的な意識改革も必要です。足が悪い世界のトップにも靴の脱ぎ履きを要求する観光施設、相手の興味にかかわらず自らの知識を披露するガイド、本人自身による日本語での予約を強要する老舗レストランなど、世界のVIPが通常受けることのないルールや決まり事の押しつけに対する不満は、依然として解消されていません。このような応対は、日本以外では失礼に当たります。

スーパーヨットの入国審査が複雑すぎる、接岸する港のセキュリティが甘い、羽田にプライベートジェットが付けられない、地方でクレジットカードが使えないなどの課題も常に挙がっています。

日本の観光消費額は、海外客の4.8兆円に対し国内は21.9兆円と、内需が大きいことが却ってグローバル対応への危機感を弱めてしまっています。

ステイホーム中に若者文化も学ぼうと、子供達が勧める韓国ドラマをいくつか観てみました。すると、はまるはまる。ストーリー展開の妙味、心に残る音楽、小粋な会話、渾身の演技力にお洒落でラグジュアリー感のあるライフスタイルなど、自国の文化や価値観に、往年のフランスやイタリアのロマンス映画のエッセンスも加えて独特の世界観を作り上げ、観るものをぐっと引き込みます。

最初から世界マーケットを見据えたマーケティング戦略が巧みで、『愛の不時着』などは世界を席巻し、「韓国はおしゃれでイケてる」というイメージを広めることに成功しています。

このように自国の強みを生かして世界水準にコンテンツを設計し、マーケティングするプロデュース力が、日本のハイエンドトラベルの設計にも求められています。

文=山田 理絵

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