美食と自然の国。日本が持つ「ハイエンドな旅先」としてのポテンシャル

Teshima Art Museum、Photo:Ken'ichi Suzuki


ただし、美しい自然があればハイエンドトラベラーを迎えられると楽観はできません。

時間をかけてわざわざ遠くまで出向く理由、その自然が自分にどのような気づきを与えてくれるのか? そこでどのようなユニークで、自分にとって意味のある体験ができるのか? 交通手段は不便でないか? 泊まりたいホテルや旅館があるか? ハイエンドトラベラーの目線で、地方にある豊かな自然や面白い文化的な資源、魅力を一つの物語としてつなげていくためのストーリーが作れないと、多忙を極める人たちがそう簡単に足を運んではくれません。

豊島美術館のように自然と建築、アートと地元民の暮らしが調和した地方には、遠くてもそこを目指してハイエンドトラベラーが来日します。鎌倉で私たちが運営しているUrban Cabin Blackの体験プログラムにも、これまで欧米やシンガポールのビジョナリーたちが、ユニークで自分を高めるアート体験を求めてやってきました。

世界中のラグジュアリーを知り尽くしているビジョナリーが感動するような体験。彼らの目線に訴える要素を見つけ出し、そこを軸に体験をデザインする本気度が問われています。

観光の再開はどの国も国内旅行から


とはいえ、いまはほとんどの国に渡航制限がかかっており、新型コロナウイルスの再流行も懸念されています。仮に鎮静化に向かったとしても、万一感染した場合に国外で治療を受けることには大きな不安がありますし、回復まで数週間隔離されることを考えれば、遠出は現実的ではありません。よってここ数年は、どの国も国内旅行が主流になるでしょう。

しかし、お抱えドクターや世話係がいるスーパーヨット客などのハイエンドトラベラーは、いち早く海外旅行を再開するとみられています。今は本当に厳しい時ですが、感染状況をにらみながら国内旅行の需要を徐々に広げ、来年のオリンピックに見込まれるハイエンドトラベラーの受け入れに向けて、インフラの整備やコンテンツの開発をする準備期間と捉えてはいかがでしょう。

国レベルでも、宿泊施設の整備やコンテンツの磨き上げ、サービスを支える人材の育成や効果的なプロモーションなど、世界水準の上質な観光体験を実現するための官民を挙げた取り組みが始動しており、私も観光戦略検討委員会の委員として、日本が抱えている課題に対する提言を行っています。
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文=山田 理絵

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