美食と自然の国。日本が持つ「ハイエンドな旅先」としてのポテンシャル

Teshima Art Museum、Photo:Ken'ichi Suzuki


ローザンヌのホテルスクールの理事を務めるア・デ・リマ氏は、日本はハイエンド層を取り込む大きなポテンシャルがあるといいます。

「コロナ後の旅には、安全性が必須条件です。日本のラグジュアリートラベルマーケットの分布は大きく変わり、欧米客の割合が大幅に増えると見ています。元来の高い衛生観念に加え、強制的なロックダウンでなく、自粛というスタイルに適応した日本国民の意識が、世界では高く評価されています。ハイエンドマーケットの主流である欧米の55歳以上の富裕層は、時間と膨大な資金力を携え、知的レベルが高いことから、日本の特殊な文化や習慣を楽しむ理解力があります。彼らは2、3週間かけて日本を様々な方向から探索するでしょう」

また、中国や東南アジアの団体客の姿はコロナ後には見られなくなり、代わって家族や友人との小さなグループが主流になるとア・デ・リマ氏はみています。

「You never eat bad in Japan! (日本で食事で失敗することはないよ)」と言われるほどレベルの高い日本の「食」も、長期滞在を促す重要なピースです。加えて、世界有数の豊かな自然を携えている点も、密を避け、野外で過ごすことがより好まれる「新しい生活様式」の中で強みになります。

このように日本は、世界における主要なハイエンド・デスティネーションとしての立ち位置を築く好機を迎えているのです。


(c) Hiroshi Sugimoto / Courtesy of New Material Research Laboratory

ネイチャー・ラグジュアリーがポストコロナのトレンドに


海外のVIPたちが良い旅の条件として共通して上げる要素は「現代アート」「食」「建築」「その場でしかできない体験」そして「自然」です。中でもハイエンド/ラグジュアリートラベルの未来は、より自然志向になるとア・デ・リマ氏は断言します。

「“自然”がラグジュアリートラベルの原動力になる。ブータン、ベトナムや日本の過疎地にスポットが当たるようになる。新潟の山嶺、海と山に囲まれた古都鎌倉、北海道の大自然など、日本は世界で最も自然が豊かな国の一つ。日本のゴールデントライアングルと呼ばれる東京―名古屋―大阪を起点にしつつ、人々は自然やユニークさを求めてより地方、田舎へと探検するだろう」

つまり日本は、自然と文化をラグジュアリー仕様にプロデュースすることができる「ネイチャー・ラグジュアリー・デスティネーション」として自らを売るべきだというのです。

その理由として、人々が密を避け、よりプライベートな環境を求めるという進化が起きていることを挙げています。

また、新しいもの好きなミレニアル世代以降の若者たちは、大都市のライブ感やエキサイティングな体験を求めると同時に、冒険心が旺盛で自然を好む探検家でもあります。ネイチャー・ラグジュアリーは若手富裕層を地方へ誘導するフックになるでしょう。
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文=山田 理絵

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