「コマド的発想」からのものづくりは「損」か
こうした「コマド的発想」は、利用者の目線に立ち、本気で人の役に立ちたいと思う姿勢から生まれてくる。このコインロッカーの場合は、その広大な土地のせいか、心が広くおおらかな県民性を持つといわれる北海道という地域だったからこそ、生まれたものなのかもしれない。
「無料で何度でも物を出し入れできるよう、コインロッカーに鍵付きの小窓を付ける」。アナログな手法といえばそうだが、コストや労力がかかる上に、「利得」を重視するならば最善であるとはいえない。
しかし、このコインロッカーの例から分かる重要な点は、今の時代では「コマド的発想」がビジネスにおいて必ずしも「損」になるわけではないということだ。
近年ではSNSの発展により、商品のどんな小さな工夫でも消費者に発見されやすくなった。そして、このロッカーのように、そのアイデアが「フレキシブルで思いやりのある発想」であればあるほど共感や感動を呼び、広く世間に知れ渡っていく可能性がある。
人間味のある配慮の行き届いた「ものづくり」こそが、人々の心を動かす「フレキシブルな発想」であり、これからのビジネスにおいて必要な考え方なのかもしれない。