コロナ禍で面会制限も。入院中の子どもに付き添う大人の「困りごと」

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そこで、光原さんたちは適切な支援を行うために、今年の4月下旬、付き添い家族を対象に緊急アンケートを行ったという。日本各地から30人余りから回答が寄せられた。光原さんが続ける。

「医療機関の形態や規模、立地にかかわらず、いずれの施設も院内感染を防ぐために、面会時間の短縮、面会回数・面会者の制限などを行っていました。また、付き添い者の泊まり、外出・外泊を禁止した施設も少なくなく、病棟内での『3密』を避けるために、子どもたちがプレイルームで遊ぶことを禁止した施設も多いことがわかりました」

こうした感染予防対策が行われた結果、付き添い家族(特に母親)は子どもに付き添えないことが強いストレスとなっていたという。面会制限を受けているお母さんからは「具合が悪くて子どもが吐いているのに、背中をさすってやることもできない」といった声も寄せられ、光原さんは胸が締め付けられる思いだったという。

こうした「親子分離」の状態は、子どもだけでなく付き添い家族の心も少しずつ蝕んでおり、アンケート調査では心の支援を求める人もいた。光原さんはさらに続ける。

「院内感染を怖れる人はとても多く、それが付き添い家族の日常的な行動にブレーキをかける一因になっていました。自主的に外出・外泊を控え、感染が拡大し始めた2月以降、病院から一歩も出ていない人もいました。誰が感染しているのかわからない状況なので、他人との会話や接触を控える行動もみられ、付き添い者の孤独感は平時よりも増しているように思います。

さらに、経済的負担も増しています。付き添いを継続するために利用せざるを得なかった個室料、公共交通機関で不特定多数の人との接触を避けるために自家用車を利用した際の高速代や駐車場代、買い出しを減らすために利用したネットスーパーの費用、祖父母にきょうだい児を預けられなくなり病院近くのホテルを利用した際の宿泊料など、平時では必要のない費用の負担が嵩んでいます。

緊急事態宣言中は、感染予防の観点から閉鎖するファミリーハウスが相次ぎ、滞在場所や休息場所を失った人の中には車中泊している家族もいました。

世の中がウィズコロナへと舵を切り、一般の人たちの日常が少しずつ戻ってきている現在も、小さな命を守らなければならない小児病棟では面会制限や付き添い制限が続いており、家族たちはいまなお自粛生活を強いられているのです」

(「入院中の子どもと付き添い家族の困りごとや不安について」調査結果報告書はこちら
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文=石嶋瑞穂

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