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国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」


中国のジーリー社傘下のLEVCによるTXのパワートレインは、ボルボ製の3気筒1.5リッターのガソリンエンジンを採用している。そのエンジンで発電した電力を、ジェネレーターを介して31kWh容量のリチウムイオンバッテリーに貯め込み、最大トルク255Nmを発揮する電動モーターで後輪を駆動する。つまり、ゼロ・エミッション走行も可能なレンジエクステンダーのプラグイン・ハイブリッドというわけだ。

新型TXは、EVモードだけで走行できる距離が100kmくらいで、電池を使い切ると、発電用のエンジンで必要な電力をまかなえる。そのおかげで、100%モーター駆動で500km以上の航続距離を提供する世界でも希な電気自動車タクシーだ。

後ろから見たTX

僕は30年以上ジャーナリストとして多くの新車をテストしてきているけど、タクシーの試乗は1、2回ぐらいしかない。でも、今回、実際走ってみると、意外に走り甲斐があって楽しかった。

TXは2トン以上の車重にもかかわらず、電気モーターのトルクが太いので、加速性は良い。でも、やはり、圧倒的な加速というより、乗客のコンフォートが優先されているので、アクセルをいっぱい踏んでも、さりげなく適度に加速してくれる。また、TXは重厚感があるので、サスは硬めにセッティングされており、乗り心地はしなやかで気持ちがいい。

ステアリングの手応えもあるし、何よりも最小回転半径が4mなので、都心部などの狭い路地でも小回り性能も驚異的だ。充電が必要になったら、近くの急速充電のChaDeMoに行けば良い。JapanTaxiと大きく違うのは、自動ドアがついていないこと。

日本に上陸した画期的なタクシーには他にも魅力がある。大型パノラマ・ルーフを採用しているので、周りの景色が思う存分に楽しめるのだ。桜や紅葉の季節、スカイツリー、東京タワーといった名所を走るときにこれはうれしい。またスマートフォンなどを充電できるUSBポートがあるし、後部席インターホンの専用スイッチを使うと運転手と直接話せるなど、利便性満載となっている。これもマスク着用の時代に便利な機能だ。

パノラマルーフ

日本のタクシー市場規模は24万台と言われ、そのうちの5万台が東京を走っているそうだ。EVモードで100kmも走行でき、6人も座れて、クルマ椅子に座ったままで車内に入れるというのは、本人も介助する人にもうれしいはずだ。しかも、狭い路地で小回りが効く性能は、日本のタクシー業界や送迎車サービスに大きな影響を及ぼすだろう。

気になる車両価格は1120万円。タクシー用として使うなら環境対応車ということで補助金が出るため、東京都なら実質756万円という。今、タクシー業界も試練の時だが、価格は安くないものの、燃費やバッテリー寿命の長さは価値が高い。

高齢化、そして図らずもウィズコロナという時代に、このEVタクシーはドライバーにとっては走行しやすく安全で、乗客にも快適な空間を提供する乗り物になるはずだ。

文=ピーター ライオン

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