そんな中で、西村がショックを受けたことがある。スペイン人の親友の両親が新型コロナウイルスに感染して10日間熱が続き、病院に搬送されたという。3月下旬のことだった。
海外では、病院の重症患者がテレビで映し出されたり、自分自身でSNSに映像をアップして発信したりする人が多かったが、日本のメディアでは、重症化している人が映し出されることはほぼなく、それまで今回のパンデミックについて実感はあまり湧いていなかったという。
友人を巡る事態について、西村は動画で冷静に新型コロナウイルスに対する思いを伝えることにした。
5分ほどの動画では、スペインの親友から聞いた話を伝えた上で「新型コロナウイルスにかかると家族や周りの人たちは悲しみます。誰か1人でも悲しい思いをしなくてもいいように、コロナの威力は大したことないなどと言わず、気をつけましょう」と呼びかけた。
西村は当時をこう振り返る。
「私が本当に実感した気持ちを、観た人も同じように感じてほしい。このことを伝える努力をすることにしました」
これは彼のSNSでの発信に対して一貫した考えでもあるが、とにかく自分自身の気づきをシェアしているのだ。特に、頑張ろうと決意した時や、反省したこと、大事だと思ったこと、率直な思いを伝えることを大事にしているという。
「上からでも下からでもなく、相手と対等な視点から伝えるようにしています。お坊さんであっても大変だと感じること、人と比べてしまうこともあり、同じように辛いんですよと、隠さないようにしています」
この裏表のない発信が、多くの人を勇気づけ、支持される理由となっているのかもしれない。
メイクアップアーティストとしての「美」にまつわる視点
西村のプロのメイクアップアーティストならではの「美」にまつわる発信も興味深い。メイクについては、「自分が好きなもの」を大切にする一方で「本当に似合っているかという客観的な視点も取り入れてみて、心地よいメイクを見つけること」を重視している。メイクアップセミナーでは、参加者にその人自身が好きだと思えて、なおかつ似合うメイクを提案している。それぞれの悩みや思いに寄り添っているのだ。
「ファンデーションの色が肌に合っているか」「メイクが左右対称に近づけられているか」「アイシャドウがぼかしてあるか」など基本的なことを除いては、トレンドに左右されるのではなく、その人がもつ本来の「美」や新たな一面を引き出す狙いがあるという。
そんな前提の上で、ミスユニバース大会で各国の代表者のメイクも担当してきた西村に、アジアの人に似合う色を聞いてみると、意外にも「金色」という答えが返ってきた。