地方発イノベーションの秘訣


電子化で記載漏れも少なくなる


実は、グラファーは横浜市からも電子申請を受託していた。経済産業省は3月、コロナ禍での中小企業の資金繰り対策に融資の枠組みを拡充。この制度は、自治体が事業者の売上減少を確認する必要がある。融資という既存制度を大手のベンダー(IT企業)でなく、なぜスタートアップに任せたのか、同市に聞いてみた。

2月までは1日に1〜2件程度に過ぎなかった窓口対応が、3月中旬には200件以上に急増。郵送受付も考えたが、どう考えても書類不備で逆に手間がかかる。こうなると、もはやオンラインしかないと、グラファーに声をかけたのだという。

この手続きは中小企業信用保険法を根拠とするので、実際に押印をなくすだけでも中小企業庁に通達を出し直してもらうことになった。オンライン化には、背後にある制度の変更も必要なのだ。

ともあれ、電子化の効果は大きく、補助金の審査では、記載漏れがなくなりミスも減るので、面倒な点検作業がいらなくなる。

神戸市では、6月末までに受け付けた8000件以上のチャレンジ補助の交付決定を8月中にほぼ終えた。決定を受けた事業者は、補助金を頼りに迅速に新事業に挑むことができたはずだ。

「オンライン申請では、システム開発をベンダーに、コールセンターや審査を人材派遣会社に発注し、制度づくりは自治体の職員たちが自らやってきた。これまでうまくいかなかったのは、全体を『まるっと』手伝ってやろうという事業者がいなかったからではないか」

グラファーの井原はこのように語るが、今回、神戸市のチャレンジ補助の交付がスムースに進んだのも、やはり彼の会社が全体をカバーしてオンライン申請を構築していったところが大きい。

全体最適(組織全体が最適化された状態)には、制度に合わせたシステムをつくるだけでなく、制度をオンライン側に寄せる必要がある。さらに審査やコールセンターまで見渡すことで、間違いをまねく案内もすぐ修正できる。

神戸市のチャレンジ支援補助金のオンライン申請の画面には次のような言葉が添えられていた。

「所要時間:オンラインは10〜15分、郵送は30分〜1時間。オンライン申請では、ミスを防止いただきながら迷わず申請いただけます。補助金の交付をスムーズに受けていただくためにも、オンラインでの申請をオススメしております」

井原の自信がうかがえる言葉だが、そこまで言うのなら、初めてだけどオンラインでやってみようと、申請者もその気になるにちがいない。

連載:地方発イノベーションの秘訣
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文=多名部重則

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