米大統領選、接戦でも株価急落の「再演」はなし?

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11月の米大統領選をめぐってウォール街では、2000年の大統領選のように接戦にもつれ込んで結果の確定が遅れた場合、当時と同じように株価が急落するのではないかという懸念が高まっている。これに対して調査会社のデータトレック・リサーチは、当時と現在は株式市場を取り巻く状況が違うため、当時の市場の反応は今回の値動きを予想するうえで必ずしも参考にならないとしている。

共和党のジョージ・W・ブッシュと民主党のアル・ゴアが争った20年前の大統領選では、両候補の得票差がごくわずかだったフロリダ州が票の再集計を開始。この措置をめぐって両候補の間で訴訟となり、最終的に最高裁の判断を受けてブッシュの勝利が決まるまで5週間かかった。この間、S&P500種株価指数は11月末までに10%近く下がった。

だが、データトレックのリポートによれば、当時は大統領選の結果に関する不確実性は市場が直面している逆風の一つにすぎなかった。また、米国株の下落は実際には、ハイテク企業が続々と業績見通しを下方修正するようになる8月末に始まっていた。

リポートでは「詰まるところ、もともとハイテク企業の収益性やインフレ対策の利上げ、米景気の減速をめぐるいくつかの懸念があり、それらが選挙結果の不確実性によって増幅されただけだった」と指摘。対照的に今回は、米経済は深刻な景気後退(リセッション)から抜け出そうとしており、企業の業績見通しの上方修正も続いていると注意を促している。

今回の大統領選は2000年と比べた場合、米景気が回復する中で行われそうなことや、米連邦準備制度理事会(FRB)がはるかに迅速に対応し、当分、低金利を維持する方針を示していることも違う点だ。

データトレックも、選挙結果をめぐる不確実性が今年、株式市場の短期的な変動につながる可能性は認めている。ただ、「長期に及ぶ激しい変動は、一般的には政治関連の問題ではなく経済ショックから生じるものだ」とも言及している。

「トランプとバイデンが接戦を繰り広げた場合、市場がしばらく動揺することはたしかにあり得るが、その場合も接戦自体は主要な原因にはならず、あくまで現在のマクロ経済的な問題を悪化させて影響を及ぼすのにとどまるだろう」(データトレック)

これまでにウォール街の多くの専門家が、大統領選の前後に市場の変動が高まるおそれがあると警鐘を鳴らしている。接戦や結果確定の遅れにつながる要因はいくつか考えられるが、とくに新型コロナウイルス対策で増加するとみられる郵送投票が大きな波乱要因になるかもしれない。

編集=江戸伸禎

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