Anuradha Varanasi is a freelance science writer.

Anuwar Ali Hazarika/Barcroft Media via Getty Images

インドでは1994年に成立した「着床前・出生前診断技術(PCPNDT)法により、性別を理由とした中絶が禁止されている。

女児であることを理由に中絶する習慣は、「女児堕胎(胎児殺し)」としても知られている。違法な性別判定テストや女児の中絶手術を行う医療機関を厳しく取り締まる政府の取り組みの一方で、こうした習慣は相変わらず、国中に残されている。

インド社会では、一家の名を受け継ぎ、将来の稼ぎ手にもなる息子は、家族の財産とみなされる。一方、娘の教育や就職に投資する世帯はここ数十年で増加しているものの、依然として女児は、家族にとっての“負担”と考えられている。

性別を理由にした中絶の例は、インド以外の南アジアの国や、東南アジアの各国でも報告されている。社会経済的背景にかかわらず、家父長制の家族にとって娘は、将来の義理の息子の家の“財産”とみなされることが多い。インドでは、娘の嫁ぎ先には嫌でも、多額の「ダウリー(持参金)」を支払わなければならない。

ジャーナル「PLOS ONE」に先ごろ掲載された論文によれば、こうした社会的な問題により、インドでは2017~30年におよそ680万人の女児が「失われる」ことになると予測されている。今年7月には、2000年以降の出生時性比は、男児1000人に対して女児900〜930人だったとする調査結果も報じられている。

論文を発表した研究チームによれば、調査はインドの29州と連邦直轄領で実施された。出産に関する十分なデータがある21州のうち16州で、望まれる子供の性別と出生率などから分析を行った結果、2017~30年には出生時性比がさらにバランスを崩すことになると予測している。

女児の出生数が最も少ないのは、北部のウッタルプラデシュ州だ。同州の人口は2億人を超え、国内最多であることから、インド全体の数値に与える影響が大きい。同州で「失われる」女児 は、2030年までに200万人を超えるとみられている。

論文の著者らは、将来に失われる女児の増加を防ぐための唯一の方法は、「ジェンダーの平等を提唱する政策を強化し、ジェンダーに関する偏見をなくしていくための支援策を実施していくこと」だと指摘する。

インドが今後、まだ生まれていない少女たちの未来を守り、「女児殺し」という悪習をなくすことができるかどうか、明らかになるのはまだ先のことになると考えられる。

編集=木内涼子

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