菅首相の「外交手腕」に疑問の声も 市場への影響は?
20人の内閣の顔ぶれも明らかに。行政改革担当大臣の河野氏に注目が集まる(Getty Images)
基本的にはアベノミクス路線の維持を訴える菅政権だが、アベノミクスの成果として挙げられることが多い「円安・株高」の環境は菅政権下でも続いていくのだろうか。
永濱氏は、菅政権がかかげる「アベノミクスの継承」と「規制改革」が外国人投資家に好評なので、「株価には追い風だ」と述べる。また伊井氏も「財政・金融政策が維持されれば、株価の上昇基調は続くと思う」と予想。「株高」については菅政権下でも期待ができそうだ。
しかし、為替についてはこれまで通りにはいかない可能性があるとの指摘もあった。伊井氏は「ドル円で考えた場合、超金融緩和政策はアメリカでも続くので、円安を維持することは難しい。極端な円高にはならないものの、円高局面もあると考えている」と分析。「円安」が続くか否かは、アメリカを中心にしたグローバルな経済の動きにかかっている。
また「円安」の維持については、菅首相の「外交手腕」にも関わってくる。トランプ氏が円安に対してしばしば注文を付けながらも制裁措置を加えるまでには至らなかった背景に、トランプ大統領と安倍前首相の信頼関係を指摘する見方があるからだ。外交力が評価されてきた安倍前首相に比べて、菅首相の「外交手腕」を疑問視する声もでている。この点で市場にはどんな影響が考えられるだろうか。
尾河氏は「11月の大統領選で米大統領が交代する可能性もあり、先行きは不透明だ」と指摘。「日米の親密な関係が薄まったり、米中摩擦が激化する中で外交の舵取りを間違えれば、アメリカとの貿易問題や為替問題が再び再燃するかもしれない。その場合は株安・円高などのリスクに繋がるだろう」と予測した。
一方で、菅首相の外交力に期待するという意見もある。広木氏は「安倍前首相とトランプ大統領がゴルフなどで築いてきたメディア受けする外交は期待できないかもしれないが、菅首相は真面目な実務家であり、かつ官僚を動かすことに長けている。外交では事務レベルの調整がものをいうことも多いので、意外とうまくいくのでは」と評価している。
新政権が発足したばかりだが、衆議院の解散・総選挙が早期に行われる可能性が高いとの見方もある。早期解散の場合、金融市場への影響は「限定的」とみられているが、永濱氏は「早期解散で選挙に勝ち、政権基盤を安定させることをマーケットは期待している」と述べ、伊井氏は「早期解散で国民に信を問うことが望ましい。その上で規制改革を」と注文する。
新型コロナウイルスが世界的に収束しておらず、ワクチン開発や確保に向けて国際競争が始まっている。国内では、経済的に大打撃を受ける業界もあり、先行きに不安を抱える人も多い中で、菅新政権は新型コロナ対策を「最優先課題」と位置付ける。市場が望むこととして、尾河氏は「マーケットの信頼を得るためには、政策について必要な情報がシェアされるかがポイント。情報発信やコミュニケーションにはぜひ力を注いでほしい」と呼びかける。
菅政権によって日本経済はこれからどのように動いていくのか、今後も注目したい。