「競争から共創、共犯へ」 個展で注目、匿名アーティストA2Zに聞く

左:Evening Snow no a Floss Shaper (Nurioke no bosetsu), From the series “Eigth views of the Parlor (Zashiki hakkei)”、右:Cupid Chastised


一般的な美術展では額装外に小さく表示されているキャプションや、展覧会の名称である「AtoZ MUSEUM」の文言が、絵画内に記載されているのも特徴的である。ややもすればハイコンテクストで権威主義的なコミュニケーションになりがちなアートシーンへの提言とも取れる。あるいは、昨今のロゴ文化への皮肉とも取れる。

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「説明する必要がないものをあえて説明している。自らの考え方やものの見方が全てではないと常に律し、外部に向けて問い直す『インサイド・アウト』的な表現でもあります」と話す。

挑戦的である一方、謙虚で、アートへの知見の有無にかかわらず誰も置いてけぼりにしない、そんな愛情表現にも感じる。

コロナ禍を経て、より強気に


一度は個展が決まったものの、コロナ禍で開催が5カ月伸びた。その間、引きこもって過ごすことによる「感性の風化」を危惧しながらも、さらなるクオリティアップに取り組んだ。結果的にコロナ禍を通じ、自身の創作活動がより強気になっていったと振り返る。

1m四方以上の大型の作品たちは、より抽象度が高いものになっている。最も大きい作品「The Resurrection(復活)」は重さ80kg、大理石の粉と樹脂を混ぜたペーストを60kg分塗った。オリジナルを離脱し、より具象から抽象に向かう過程をエネルギッシュにパレットナイフで描いた。



アートのあり方は社会環境や社会構造の変化と切っても切れない関係にある。A2Zは今という時代をどう見ているのだろうか。

「アートとファッションとビジネスが近づいていき、その境界線が曖昧になる。分断から融合へ。ヒエラルキーはよりフラットになり、新旧が入り混じり、入れ替わる。時代は競争から共創、そして共犯へ」

A2Zによる「AtoZ MUSEUM」は9月21日まで。渋谷PARCOでは9月18日〜27日、「SHIBUYA PARCO ART WEEK」を開催。本展を含む館内の9つのギャラリーが様々な展覧会を行い、ショップでもアートにまつわる展示や商品を展開し、アーティストやDJによるスペシャルイベントも開催される。

文=林亜季

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