キャンプや土いじりで無心になれる理由

大西洋平 I-ne(アイエヌイー)代表取締役社長

ヘアケアシリーズ「BOTANIST」が2015年の発売からシリーズ累計7000万本を記録。ブランドを展開するI-neの大西洋平にアイデア具現化のための社の強みや「無心になれる」趣味について聞いた。


BOTANIST、SALONIAなどさまざまなライフスタイルブランドを展開するビューティーテックカンパニー「I-ne」は、「世界中のお客様にイノベーティブな“アイデアとマーケティング”で幸せな体験を届けること」をミッションに、プロダクトとサービスを提供しつづけています。

起業したのは22歳、大学在学中です。思い返せば、大学の授業より、引っ越し業者とバーのアルバイトで学んだことのほうが大きかった。引っ越しはバイクの免許取得のために高1で始め、高3のころにはチームリーダーになっていました(笑)。引っ越しってすごく奥が深いんです。冷蔵庫の運び方や設置の仕方とか、トラックに大小の荷物を、重さのバランスも測りながらパズルのようにはめねばならないので、それを考えるのも面白かった。大学時代も夕方から早朝までバーでアルバイトをして、魅力的な経営者の方々とお話しする機会に恵まれました。そういう純粋な働く楽しみや醍醐味が、在学中での起業につながっているのかもしれません。

資金力や人材の豊富な大手企業にベンチャーが勝つには、商品企画を具現化するスピード感と、高いクリエイティビティしかありません。そのため弊社では「部門を問わず、全社員が月1つ以上のアイデアを提案する」ことを、創業時から続けています。

いいアイデアが出ないというのは圧倒的なインプット不足ではないかと考え、クレドにも「24/7 input」(24時間インプットせよ)と記してあります。一方、アウトプットの場所を会社が用意することも重要で、「月1回のアイデア提案」はそれに当たります。通常2〜3年かかると言われる商品開発を、最短6カ月で可能にしているのは、これらがよく機能しているのではないかと思います。

僕の場合、インプットでありアウトプットの時間になるのが、キャンプと植物栽培です。もともと父がキャンプ好きだったのですが、5年前に友達と久しぶりに行ったらハマりました。兵庫県北部の若杉高原で、星空が関西一との評判でしたが、本当に綺麗で……。

いまは家族や社員を誘って、月1回は行きます。魅力は、森林浴、焚き火、調理や食事を介した人とのコミュニケーション。社員と行くときなどは上下関係なく、僕もゴミ捨てや薪割りを率先します。共同作業や料理がすごく好きなんですよ。それで焚き火を囲んで、みんなで会社の未来の話をする。しかも緑を見て、川のせせらぎや鳥のさえずり、火のはぜる音を聞いたら、リラックス感も得られますし、本当に至福の時間です。

土いじりは、育てる大変さが逆に魅力。例えば海外輸入の球根を水はけの良い土に入れ、定期的に水をあげ、根を生やす。冬は室内の温度管理シートの上に並べ、15度以下にならないように気を配り、24時間ずっと扇風機を当てる。家でいつもそんな感じなので、子どもに「植物ばっかり!」と拗ねられたときもありました(笑)。

会社は社長の心身の健康に左右されます。僕がいま健康なのは、健康管理を徹底し、趣味全般を楽しんでいるから。量的には測れないけれど、仕事には100%プラスになっていると思いますね。
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構成=堀 香織 写真=yOU(河崎夕子)

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 8月・9月合併号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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