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地域経済とソーシャルイノベーション


コーヒー店で、手応えを感じていた和田も30を迎える前に、本当に自分がやりたいことの追求を考え始める。このまま焙煎屋勤務で終わるのか?人生を悶々と悩んでいた時に地元茨城県が主催する起業家育成育成塾に入る。

「最初は軽い気持ちで申し込みました。無料だし合格したらやってみようくらいの気持ちで」

この決断が和田の人生を大きく変えることになる。

強い思いを受け入れる安全な場



あっちこっちstandのパートナーの中村(右)と和田(左)

和田の転機は、講座の2回目のフィールドワークだった。「大好きなお父さんが焙煎したコーヒー豆で、自分がいれたコーヒーをみんなに飲んでほしい」。そう思った和田は、悩み迷い自分と戦い前日の日付が変わるぎりぎりに、事務局に依頼のメッセージを送った。1つのメッセージを送るのに1日以上かかったそうだ。

その時の和田を後押ししたのは、今のままでは変わらないという強い思いと心理的安全性だったという。私が起業家育成でもっとも大事にしているのが、1. 守秘義務、2. ポジティブ原則、3. 固定観念を捨てるというこの3点だ。この3点を講座の前に何度も念押しすることで、受講生らはもっている潜在能力を発揮しやすくなる。行動することにおける心理的安全性が担保されるからだ。

「何度も挑戦してこなかったから、ここでやらなきゃまずい。とにかくこれがラストチャンスだと思いました。起業家育成塾では、運営側が心理的安全な場づくりをしてくれていたし、ここで変わらないと私いつ変わるんだろうという、このままいまの自分を好きにならないで生きるのは嫌だという危機感もありました」。

実際に参加者らにコーヒーをふるまい、目の前の人が美味しいといってくれることに自分が大好きな状態をみつけることができた。「あのコーヒーが私のベストコーヒーです」。取材時にそう力強く語る彼女の顔がとても印象的だ。

その後、和田のコーヒーへの思いに共感した仲間らと「あっちこっちstand」というチームを組成。茨城県のイベントなどにも積極的に参加し地元の人からの好評を得た。

軽い気持ちで踏み出した和田は、県内のイベントで移動型コーヒー販売店のテストマーケティングを複数回行い、売り上げをあげた。また最終プレゼンテーション当日は審査員らにも自分が鍛錬したコーヒーの試飲を実施し熱をこめて思いをつたえ最優秀賞を受賞した。卒業後は、人口約16000人の過疎地域大子町に移動して、地域おこし協力隊として自分のあり方を探求し続ける。

文=齋藤潤一、写真=本人提供

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