ビジネス

2020.09.21

既製品とハンドメイド技術で革命を。家内制カスタマイゼーション


これらのアウトカムに、なぜこれほど心が動くのでしょうか。その理由は2つあります。

一つは、サンプリングというプロセス。DJ、大喜利、オマージュなどと同じく、モノ本来が持つ機能や文脈から外し、単なる素材として扱うことで生まれる意外な組み合わせが新たな魅力を生んでいます。

二つ目は、ゆらぎ。身近なものを使って手持ちの技術でさっとつくる。まかない飯にも似たこのインプロビゼーショナルな創意工夫は、環境に深く依存します。完成品に、ご家庭の様子や地域性などさまざまな個性が如実に現れてくる。その「ちょっと歪んでいる」とか「つくり手の妙なこだわり」などのゆらぎが既製品に乗っかってよい味を醸し出すのです。

個人的にグッと来たマスプロダクトを「サンプリング」し、手持ちの技術でさっと改変すると、魅力的な「ゆらぎ」のある個性的プロダクトに変身する。これが家内制カスタマイゼーションの方程式です。

これを商品開発やプロモーションに取り入れると何が起きるか。たとえば主婦やご老人など、いままでビジネスから遠かった人々が「イノベーター」として重宝される新しい座組みができます。しかも、大企業でもつくれない非連続的なイノベーションが家から頻出する可能性が。そんな作品はSNSで広がりやすく、自然発生的なプロモーションにもなります。

純粋なハンドメイド好きの方にとっては、おそらく大企業のマスプロダクトは新感覚素材。普段の発想を超えた新作誕生のチャンスが増えます。不用品がゴロゴロ転がっている自宅は、創造性の宝庫。Stay Homeが推奨される昨今、家の中からパラダイムシフトを起こしてみてはいかがでしょう?お手製が生み出すのはマスクだけではないのです。

困りごとから入るもよし。マスプロダクト探しから入るもよし。あなたなら、どんな家内制カスタマイゼーションしますか?次のイノベーションはあたたかくて、歪んでいて、とっても個人的な形をしているのかもしれません。


電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

石田沙綾子
◎ハンドメイド担当。電通ビジネスデザインスクエア所属のアートディレクター。休職してロンドンへ留学をしたり、MBAを受講したり、下手っぴな子ども服をつくって楽しむ寄り道好き。

文=石田沙綾子 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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