しかし、Fitbitの共同創設者兼CEOのジェームズ・パークは、それが単なる偶然だったと断言している。
「センサーとアルゴリズムの開発、そしてこれらの機能の認証を得るためには数年の期間が必要だった。この時期に発売できたのは、良いタイミングだったのかもしれないが、パンデミックが起きたことは、決して喜べる事ではない」
同社の新型スマートウォッチ「Fitbit Sense」をパークは、本物のヘルスウォッチと呼んでいる。このデバイスは潜在的な発熱を検出する能力に加え、ストレスレベルを検出するための電気皮膚活動(EDA)センサーを備えている。Fitbit Senseは、EDAセンサーを搭載した世界初のスマートウォッチでもある。
さらにこのデバイスはFitbitのデバイスとしては初めて、不規則な心拍数を検出するための心電図機能(ECG)も搭載している。これらの機能を通じ、Fitbit Senseはユーザーのストレス検知に大きな強みを持つデバイスに仕上がった。
「現在は、より多くの人がフィットネスと健康を一つのものとして捉えるようになった。Fitbitは、単なるフィットネストラッキングの企業から、ヘルス領域の企業になることを目指している」とパークは話す。
EDA センサーは、皮膚の汗レベルの小さな電気的変化を検出することによって動作する。Fitbitの研究チームは、米国の主要な学術機関の医療専門家と密接に協力して技術を磨き上げ、湿度の高い地域での使用も考慮に入れてデバイスを仕上げた。
その結果、Fitbit Senseは着用者のストレスレベルの変化を、人間よりも先に検知することが可能になった。この進化の方向はもちろん、Fitbitのビジネスの向かう先を示すものでもある。
アップルウォッチは当初、ファッションアクセサリーとしての魅力を打ち出していたが、健康モニターに進化することでウェアラブル市場で、35%という圧倒的シェアを確立した。一方で、Fitbitの市場シェアは4.1%に留まっている。
アップルウォッチの牙城を崩すことは非常に困難ではあるが、Fitbitは昨年、グーグルからの買収提案を受け入れ、アンドロイド陣営を代表するウェアラブルデバイスになろうとしている。