海を汚染するマイクロプラスチック 解決の鍵は「蜘蛛の糸」にあり?

海を汚染する使い捨てプラスチックの中には、目に見えないほど小さなものもある(Unsplash)


ケンブリッジ大学のスピンアウトであるXamplaでは、各ブランドや顧客がマイクロカプセルに求めるすべてのメリットを、プラスチック汚染を引き起こすことなく提供できるソリューションを開発しています。

蜘蛛シルクや植物性タンパク質による新素材も


Xamplaの科学研究は、自然界で最も素晴らしい素材を作り出す生き物の一つからインスピレーションを得てきました。ある生き物は、3億8千万年もの間、強靭で柔軟性のある物質を作り続けています。その生き物、蜘蛛は、アミノ酸の自己組織化能力を利用して、タンパク質を成分とした糸を作り出します。タンパク質とエネルギーだけを使って蜘蛛シルク(糸)を生成するのです。その糸は質量あたりで比較すると鉄よりも格段に強く、高性能な素材です。

私たちは、蜘蛛が糸を作るのと同様の効率的なプロセスで、無害な植物性タンパク質から、プラスチックのような素材を作り出す方法を発見しました。この素材は、エンドウ豆や大豆のような豆類に多く含まれるだけでなく、菜種やジャガイモにも含まれており、豊富に生産され再生可能です。これにより、石油化学製品よりもはるかに持続可能な原料となり、蜘蛛の糸にも勝る可能性を持ちます。

私たちが発見したものは、使い捨てプラスチックに代わる、大量生産可能な唯一の自然由来の素材ではありません。しかし、海藻や藻類のような多糖類ではなく、植物性タンパク質から作られたものとしては初めてです。強度や安定性を高めるために刺激の強い溶剤を加えるということをしないため、廃棄された時は自然に、完全に、素早く分解されます。そのため、排水溝に流しても全く問題ありません。

欧州化学物質庁(ECHA)は、意図的に添加されるマイクロプラスチックに関する制限を提案し、現在協議が進められています。EUでは、この制限に向けて、マイクロプラスチックの特定のカテゴリーを定めました。私たちは、影響を受ける産業に向けて対応策を提供し、ECHAによる制限が実施される10以内に最大10万トンのマイクロプラスチックを、新たな素材に置き換えることができると推測しています。

新型コロナウイルスの感染拡大は、ポスト石油の地球へ移行することを目指す企業や政府の計画に、否応なく影響を与えています。優先事項は短期的なものへと変化しましたが、変化を起こすためには当然多くの時間を要します。注目度の高い、目に見えるプラスチック汚染に依然として重点が置かれていますが、マイクロカプセルのような隠れたマイクロプラスチックに対するソリューションがあり、それは、複雑な構造変化や行動変化を伴うことなく、企業が今すぐにでも実行できる解決方法なのです。

Xamplaが開発した素材は、次世代のバイオベース素材を代表し、さらに、ポスト石油社会への移行を実現するための実践的でスケーラブルな道筋を示す、世界で数少ない素材の一つです。まさにこれが、「よりよい環境を取り戻す」ための現実的な解決策であり、また、短期的目標のプレッシャーにも関わらず長期的な目標を達成できる方法です。目に見えないものも含め、環境を汚染する使い捨てプラスチックをより安全な素材へ置き換えることは可能なのです。


(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Simon Hombersley CEO, Xampla

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