また、1階には洗面所や、トイレ、収納などもあるが、ドアが連続して並んでいるような意匠とするため、全面に有孔ボードを使う代わりに、実際のドアと、壁との区切りに有孔ボードを貼ったという。「そうすることで、体育館の脇に並んでいる部室のような雰囲気を出しています」。
「有孔ボード」とベニヤが交互に貼られ、まるで「部室のドア」が並んでいるように見える壁
ちなみに「床面」は「カバザクラ」という、体育館にも一般住宅に使われる無垢材のフローリングを使用している。「施工の際に、下地の『根太』と呼ばれる部材を通常よりも多めに配置して、強度を確保しています」。
コートの右手奥にあるダイニングキッチン。
「究極の吹き抜け」にバスケットボールの弾む音がこだまするのを聞きつつ、料理する。「こもっていても絶対に運動量の減らない家」でレクリエーションし、ストレスもはね返す。そんな弾力的な暮らしがここにはある。
ダイニングキッチン内部
用途は「バスケット」だけではない
バスケットコートは床面積が広いが、「ルンバ」が掃除してくれるのでとくに苦労はない。そんなコートを、バスケット以外の用途に使うことはあるのだろうか。
「娘はバスケをしていないので、娘の友達が来ると、バドミントンをやることが多いです。下の子はサッカーも好きなので、サッカーをやったりもします」。階段下収納には、ミニサッカーのゴールやトランポリン、さまざまなスポーツのボールや道具が所せましと詰め込まれている。
2階は寝室、子ども部屋、リビング、兼プレイルーム。壁沿いには本棚。
「逆算設計」でコスト減、無印やIKEAも味方に
2階の壁沿いには、床から天井まで本棚が設置されている。その様子はまるで図書館のようで、1階のアスレチックなイメージとは好対照だ。
そして、実はこれらの棚は驚くべきことにすべて既製品だという。
「洗面室とキッチンの棚には『MUJI』のステンレスユニットシェルフをパーツ別で購入し、棚板だけ建材の間柱材を使うことで、空間との調和を図っています。2階の廊下には『IKEA』の『ビリー』というロングセラーの本棚を28台配置しています。ビリーの高さに合わせて天井高さを決めたり、廊下の壁は壁紙を貼っていますが、ビリーの白色に最も近い白を採用しています」
既製の棚に高さと色を合わせて、「逆設計」することでオーダーメイドのようにすべてきっちりと収めることができ、何よりコストを抑えた。
「わが家だけでなく、私たちの設計室では無印やIKEAの家具をよく使います。シンプルだし、同じ長さのものを数多く調達することも可能なので、うまく使えば作り付け、備え付け感が実現できます。設計し終わって設計士の手を離れた後も、『このままで揃えていくと、きれいに拡張できますよ』とアドバイスできますね」