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2020.09.23

事業会社からの資金調達が競争環境に与える影響


こうしたリスクを軽減するために、「社内で情報を共有しない」という取り決めを、主契約に付け加える形で事業会社/CVCに要求するスタートアップもあります。もしくは、「競合するプロダクトを開発しない」という取り決めなどです。場合によっては、さらに踏み込んで、「競合他社と提携しない」ことまで明確に要求することもあります。

ここで出てくるのが、事業会社/CVCとの提携を通して、その事業会社との競争を排除するだけではなく、他のスタートアップとの競争も減らせる可能性です。投資する上での暗黙の了解として、または主契約の覚書の中に明確に書き記すことで、相手の事業会社が他社へ投資、もしくは協業することも阻止できるのです。

もちろん、制限はお互いにかけられます。事業会社/CVC側からも、スタートアップに競合他社と協力しないように要求することができます。その場合、もし将来的に他社と組んだほうがそのスタートアップにとって有利になるような展開になったとしても、できなくなります。これは、スタートアップの今後の資金調達に対する決定権や、買収の際に優先的に交渉する先買権などを事業会社が所有している場合、特に問題になります。例えば、あるスタートアップの買収に向けてどんなに頑張ったとしても、事業会社/CVCがいつでも取引を白紙に戻し、自ら買収してしまえると知っていたら、誰がそのスタートアップを買いたいと思うでしょうか。

独立系ベンチャーキャピタルと違って、事業会社/CVCには複数の目的があります。経済的リターンも大事かもしれませんが、最も重要なのは戦略的なリターンです。この特徴がスタートアップにとって有利に働くように工夫し、関係を築くことで、競争を減らすことも可能です。しかし、リスクはありますので、慎重に行動したほうがいいでしょう。

連載:VCのインサイト
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文=James Riney

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