創造力の勉強法は、台所の定番料理にヒントあり

BRETT STEVENS/Getty Images


この思考法はそのまま料理にぴったり当てはまります。すなわち、まったくゼロから考えた料理レシピなどどこにも存在していないと言うことです。例えば「牛丼」を例に考えてみます。これはかつて日本にはなかったレシピでした。牛肉は文明開化以降、初めて日本人が食べるようになった食材だからです。よって牛丼はまったく新しいレシピのはずですが、よく見ると牛肉以外は日本人が慣れ親しんだ味付けや丼ぶりという既存のスタイルです。

もう一つ別の例です。戦後、北海道で生まれた味噌ラーメン。味噌という日本人ならば誰もが親しんできた「味噌」と「中華そば」という既存の要素の組み合わせです。単純と言えば実に単純ですが、このシンプルさゆえに飽きのこない不動の味が生まれました。

ということで、まずは既存の二つの料理(アイデア)を、無理やりでもいいのでフライパンの中で強引に合体してしまうというのはどうでしょうか。ここでポイントが一つあります。人は自分のよく知っている味か、その延長線上にある味を美味しく感じる傾向にあります。未知の味には警戒心の方がまさってしまうからです。なので、まずは「誰もが知っている味」を組み合わせると、成功率は格段に高くなります。

逆に言うと、誰も知らない味を組み合わせても、結局未知の味や、よく分からない味で終わってしまいます。なので新レシピの最高の賛辞は「初めてだけど、懐かしい味」と言われることだと私は思っています。先述した牛丼、味噌ラーメンもまさにこのセオリーに当てはまります

ということで、僕の作った新レシピをここで紹介したいと思います。

名付けて「カレー麻婆」。カレーと麻婆豆腐のどちらを食べようか迷ったことがありました。ならば両者を合体させてしまえばいいと思ったのがきっかけです。作ってみると、その味わいに「俺は天才?」と思うほどでした。

こんなふうに自分の好きなものを組み合わせてみるのです。ただ一つ注意点があります。「誰もが知る味」同士であっても、なんでもかんでも合体させればいい訳ではありません。カレーと麻婆豆腐が上手くいったのは、両者には「流動性ある形状」と「スパイシーな辛さ」という二つの共通点があったからです。共通点は互いの接着剤の役目をしてくれます。まずは各料理の共通点を探すところ始めるといいと思います。


カレー麻婆




【材料】(一人分)
木綿豆腐 180g(約半丁)
レトルトカレー 1袋
長ネギ 10cm(みじん切り)
ごま油 小さじ2
A(豆板醤、小さじ1/5-1/4、ニンニク・ショウガは各チューブ3cm分)

【作り方】
1 フライパンでAをごま油で弱火で炒め、香りがたってきたらサイコロ状に切った豆腐を和えながら軽く炒める。
2 レトルトカレー、ネギを入れ、蓋をして弱火で加熱。煮立ってきたら豆腐とカレーをよく絡めて、火を止める。

連載:週末遊牧民~森と都市の狭間を旅しながら~
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文・写真=小林キユウ

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