創造力の勉強法は、台所の定番料理にヒントあり

BRETT STEVENS/Getty Images

牛丼と味噌ラーメンの共通点は何かご存知だろうか? 答えは、このメニューを生み出した発想プロセスである。誰にでも愛される商品のアイデアを生み出すには、「台所での素振り」が訓練になるかもしれない。料理写真家による好評の「男のフライパン料理」連載第三弾。


さて、キッチンでそれなりにあなたの居場所、そして心構えはできたでしょうか?

次の課題は、何を作るか、です。

これはある意味、最大の課題でもあります。キッチンに立つあなたの真価が問われることであり、最大の試練になるかもしれません。世にあまたあるレシピ本やwebのレシピサイトを検索して、それを見て作ればいいんじゃないの?という声が聞こえてきそうです。

たまの休日の男の料理ならそれでいいでしょう。しかし、テレワーク中の在宅男子、ここはビジネスと同じく、クリエイティビティを発揮してはどうでしょうか。なぜなら、前回書きましたが、キッチンに立つということは、ライフスタイルのイノベーションなのですから。レシピにおいてもここは革新を目指しましょう!ここでいつも妻が作る肉じゃがを作っても仕方ないと思うのです。

自分の感性で自分だけのレシピを考えるのです。料理ほどクリエイティブな作業はないんじゃないかと僕は日々思っています。一流のシェフたちがつくる料理は優れた芸術品でさえあると思います。それが僕が料理写真を撮っている最大の理由です。プロのシェフに比べれば、足下にも及ばないのは重々承知なのですが、僕は料理の腕も知識もないなりにベストを尽くしたいと思っています。

右脳をフル稼働させて、時にはアーティストのように独創的な世界を目指しましょう。あなたが起業家やそれを目指す若者だったらなおさらです。

新しいレシピを生み出すことは、ある意味、新しいビジネスアイデア生み出すバットの素振りのようなものです。とりあえず今はそう思い込みましょう。少なくともその訓練にはなるはずです。日々の料理は、斬新なアイデアを生み出すアタマの体操です。

ここで一冊の本を紹介したいと思います。「アイデアのつくり方」(ジェームス・W・ヤング著、CCCメディアハウス)という本があります。アメリカで初版が出たのはもう80年前。邦訳本は1988年で現在までに76版を数えているロングセラーです。著者はアメリカ最大の広告代理店トムプソン社の常任最高顧問などを務めた人物。広告業界で培ってきたアイデアの生み出し方を理論的に説明しています。最も象徴的なのは次の言葉です。

「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」

つまりどんな斬新に見えるアイデアも、ゼロから生まれたわけではなく、すでに世の中に存在しているアイデアの組み合わせにすぎないということです。本書では、さらにそのための資料集めが必要であること、集めた資料を自身の中で咀嚼、消化することの必要性を説いています。
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文・写真=小林キユウ

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