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2020.09.16

Apple復活と躍進のシンボル「iMac」の進化をデザイン視点で振り返る

iMacの歴史をたどれば、デザインの本質が見えてくる


6代目iMac(2007)プラスチックからアルミニウムへ、時代が変わる


現在のiMac

iPodがiMac G5のデザインに影響を与えたように、iPhoneも次世代iMacにインスピレーションを与えた。

この世代からそれまで一貫して採用してきたデザインスキームである透明感から、新しいデザインスキームである”メタル感”への移行を進めた。これは同じ年に発表された初代iPhoneと同じ。プラスチックはほとんど使われず、黒いガラスのベゼルとアルミニウムの筐体に囲まれた大きくて光沢のあるディスプレイは、iMacを一瞬にしてよりモダンな印象にした。

外側のケーシングには、RAMアップグレード用のスロットにアクセスするために、目に見える一本のネジが使われている。同様のスタイルは、AppleのCinema DisplayやユニボディのMacBookにも採用された。

スティーブ・ジョブズは、プロのユーザーは新しいデザインが従来のモデルよりもプロ用のコンピュータに似ていると感じ、消費者はさらにハイエンドのコンシューマー向け製品に似ていると感じていると説明。このユーザーフィードバックをもとに、MacBookやディスプレイもそれまでプラスチックから、アルミやチタン合成をメイン素材として採用し始めている。

チタニウムと呼ばれるMac
アルミをメイン素材としたMac Proとディスプレイ

また、この時期から世の中ではテクノロジー企業やデジタルデバイスの環境に対する影響が叫ばれ始めていた。

それはAppleに対しても例外ではなく、20インチや24インチのディスプレイへの移行は、すべてのパーツにおいてさらに多くの材料が使われることを意味していた。プラスチックに比べ、アルミニウムとガラス素材はリサイクル性にも優れてる。

プラスチックからアルミニウムとガラスに切り替えたことは、『持続可能性』の面で大きな飛躍を実現した。その後、よりシンプルさを追及するために、マウスもキーボードもワイヤレスを採用した。2009年の7代目ではUnibodyを、2014年にはRatina 5Kのディスプレイを実現した。

その後もiMacはシンプルさと性能の追及は続けられ、エレガントなデザインとカテゴリー最高レベルの性能の両立を達成し続けている。

iMacのある風景

iMacはそれぞれの時代における最高峰のデザインの体現


このようにiMacは時代とともに進化を続け、現在の姿にたどり着いている。新しいモデルがリリースされるたびに「その手があったか!」という感を受ける。

それはAppleが『常にデザインの限界を推し進め、与えられた制限の中で最大限のデザインを成し遂げる』ことで常に時代の最先端を進んでいることがわかる。同時に初代の登場から20年以上経っている現在でも、iMacの魅力は続いている。むしろ初代のiMacをリビングルームやオフィスにインテリアとして飾っている人もいる。そこにはどれだけ時代が変わっても、『コモディティーにはならないデザイン』の力が発揮されていると感じる。

最新のiMacが最高のiMacを実現しながらも、それぞれがタイムレスな魅力を持ち続けてもいる。全てのモデルに一貫して共通しているのは『常に究極のシンプルさの追求』であり、それこそが究極のデザインのゴールとも言えるだろう。

1998年にスティーブ・ジョブスが世の中に対して放った「宣戦布告」は今でも脈々と引き継がれている。

(この記事は、btraxのブログfreshtraxから転載・編集されたものです)

文=Brandon K. Hill(CEO of btrax inc.)

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