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2020.09.16

Apple復活と躍進のシンボル「iMac」の進化をデザイン視点で振り返る

iMacの歴史をたどれば、デザインの本質が見えてくる

Appleは史上初の時価総額2兆ドルを超える企業になった。同時にその時点で世界で最も価値のある企業になったということである。グローバルブランドランキングでも堂々の第一位を獲得。名実ともに世界一の会社になっている。

一時期は倒産寸前まで追い込まれていた企業とは思えないぐらいの大躍進をしたことになる。そのAppleを復活させたのはスティーブ・ジョブスであることは間違いない。一度は会社を去った彼が復帰したことで、Appleは「救済」された。

そして起死回生を支えたプロダクトが紛れもなくiMacである。

20数年前に瀕死の状態だったAppleは、ジョブスが復帰しiMacをリリースしたことで息を吹き返し、今日に続く大きな成長を成し遂げた。

iMacの歴史はデザイン・イノベーションの歴史


デザイナーにとってiMacのデザインストーリーから学べることは多い。色、形、素材、小型化の探求は、リリースされるごとに大きなブレークスルーをもたらした。また、iMacというプロダクト自体がイノベーション、ビジネス戦略、ハードウェアデザイン、ソフトウェア開発、ユーザー体験全てにおいてイノベーションの本筋を学ぶ優れた教材にもなっている。

Apple復活、そして躍進の象徴でもあるiMacのデザインの進化を見てみよう。

初代iMac(1998)Appleを倒産から救った革命児


初代iMac

1985年にAppleを去ったスティーブ・ジョブズが同社に復帰したのが1997年。その際に真っ先に手をつけたのが、プロダクトラインの一新である。

ジョブスがいなくなった後のApple製品は数が多すぎたし、何よりもデザインがどんどんダサくなっていった。それに対してジョブスは大胆にほとんどのプロダクトを廃止。限られたリソースを「一つのプロダクト」にフォーカスした。そして、急ピッチでデザイン・開発され、復帰第1弾としてリリースされたのが初代のiMacである。

ジョブズがアップルに復帰して最初にメジャーリリースされた初代iMacは、当時、インダストリアルデザインのVPを務めていたジョナサン・アイブを世に送り出したコンピュータであると同時に、Appleが復活の道を歩むことを発表したマシンでもある。

iMacのデザインは、『ベージュ』の四角い箱に入っていたそれまでのパソコンの常識を全て覆した。ブルーの半透明の筐体に全てが入れられ、CPUとディスプレイが一体型。

ちなみに上写真の色の正式名称は”ボンダイブルー”で、ジョブスがオーストラリアのボンダイビーチの海の色からインスパイアされてつけた。この半透明のデザインスキームは、キーボード、マウス、そしてUSBケーブルに至るまで細部にまで採用された。その後、キャッチーな5つのカラーオプションも追加した。

そしてその色の名前自体がおしゃれ。

・ボンダイブルー
・ブルーベリー
・グレープ
・タンジェリン
・ライム
・ストロベリー

初代iMacの全てが“パソコンっぽく”なかった。それはまさに“レトロフューチャリズム”を体現したデザイン。当時はことキャンディカラー&スケルトンのデザインスキームをパクる企業が続出するほど大流行した。

ちなみに、このiMacの鮮やかな色合いは、1960年代のオリベッティ・タイプライターからインスパイアされたと言われている。

5色のiMac
初期のボンダイブルーに追加された5つのカラーオプション

デザインの可愛らしさに人気が集まり、教室やリビングルームに置くパソコンとしても大人気。Macというプロダクトを一部のマニアックなファン向けから、『学校や家庭で使えるみんなのパソコン』に成長させた。

また、多くのWindowsユーザーが初めてMacに乗り換えるきっかけにもなったプロダクトでもある。そして、性能も当時にしては十分。インターネット時代のために作られたApple初のコンピュータでもあった( “i”はインターネットの意味)。ただ、こだわって“まん丸”にデザインされたマウスは手首が痛くなるほど使い難かった。

2000年にリリースされた2代目ではデザインと性能の改善をするとともに、インディゴブルーをはじめとした、13色の豊富なカラースキームを提供した。

 セカンドシリーズに採用された13色のカラースキーム
2代目iMacに採用された13色のカラースキーム
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文=Brandon K. Hill(CEO of btrax inc.)

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