問題の発言は12日、前回2016年の大統領選でトランプが惜敗したネバダ州の選挙集会で飛び出した。トランプは演説の中で、今回は自分がネバダ州を制して再選すると強調し、こう続けた。
「そのあと、われわれは交渉するだろう。なぜなら、われわれに対する仕打ちからして、おそらくはさらに4年、(大統領任期を務める)権利があるからだ」
トランプは8月にウィスコンシン州で開いた集会でも、2016年の選挙では当時のバラク・オバマ政権が「わたしの選挙陣営をスパイした」として、再選後さらに4年、大統領を続けられるべきだと訴えていた。自身が「オバマゲート」と呼ぶ根拠のない説に基づく主張とみられる。
こうした発言を戯れ言として退けてはならないと警鐘を鳴らすのは、トランプの顧問弁護士だったマイケル・コーエンだ。トランプ批判に転じたコーエンは、トランプは自分が米国の「支配者」、ありていに言えば「独裁者」であるべきだと考えており、そのため憲法を変えたがっていると断言する。
コーエンはCNNのインタビューで、仮にトランプが再選された場合、「就任初日から、3期目、4期目に向けて憲法を変える方策をおのずと考え始めるだろう」と語っている。
トランプが独裁者を好むのは、本人にも似たような野心があることの表れだとコーエンはみている。3期目以降のことを考えるのも、トランプが中国の習近平国家主席らに言っていたとおりのことだし、そういう野心があるからこそ「“世界の金正恩たち”を称賛する」
フランクリン・ルーズベルトが米国の大統領としては前例のない4選を果たしたあと、1951年に批准された米国憲法修正第22条は、大統領が3期目以上を求めることを禁じている。トランプがそれを変えようとする場合、議会両院の3分の2以上の議員の賛成による発議か、全米の3分の2以上の州議会の請求による憲法会議の招集が必要になるが、いずれも党派対立が激しい今日の政治条件下ではきわめてハードルが高い。
リアル・クリア・ポリティクスのまとめによると、トランプは全米の平均支持率で民主党候補のジョー・バイデンに7.5ポイントの差をつけられている。トランプは、3期目どころか2期目の再選のほうが怪しいと言うべきかもしれない。