時代を読む、東京ホテルストーリー vol.3「SORANO HOTEL」

天井を飾るルーバーはまるで木造を想わせ、リゾ-トらしい開放感が爽快な印象。

男女を問わず、社会で活躍するエグゼクティブたちは、魅力溢れる東京のホテルをどのようにお使いだろう。

せめて月に一度くらい、可能なら二度でも三度でも、誰にも邪魔されず、両手を伸ばして深呼吸をするために滞在するのはどうだろう。

東京のホテルは、時に伝統文化や江戸の粋が活かされ、また時には、都会らしい最新鋭設備を纏うなど、それぞれが個性的に進化を遂げている。ゆったりと異空間に身を委ね、すべてを忘れて過ごす癒しの時間。まずは週末、金曜日の夜にチェックインして、日曜の午後まで、別宅で過ごすように、自分独りで夢想に浸るのも今どきの流儀であろう。

ホテルジャーナリスト せきねきょうこ


永遠のテーマ“ウェルビーイング”を掲げ、東京に誕生したアーバンリゾート


新宿駅から中央線でわずか30分余り、ベッドタウンの開発が進む立川駅から徒歩8分。未来志向のホテルがオープンした。世界的にも感染症蔓延の真っ只中、2020年6月8日にドアを開けたホテルは、緑多き東京郊外の立川にある。


「DAICHI NO RESTAURANT」はアラカルトで選べ、Well-Beingを基本に、体に負担の掛からない食材が選ばれる。特に「活性御膳」や発酵食品、健康食材が使われる「晴れの朝食」はお薦め。テラスではワンちゃんも一緒に食事が可能。

徹底した感染症対策はもちろんのこと、心身共に人がどう健康に生きるかを追求し、これまでホテルが前面に掲げることを躊躇してきたコンセプト“ウェルビーイング”を堂々のテーマとし、未来のホテルを目指す挑戦である。スパ、ウェルビーイング、ヘルス、エコ、などと謳うだけで、日本のホテル市場では、なぜか少々敬遠されがちなジンクスがあったのだ。

もともとウェルビーイングというテーマは、ホテルが建つ再開発の新街区「GREEN SPRINGS」が、“空と大地と人がつながる、ウェルビーイングタウン”(約3.9万m2)として掲げたコンセプトでもある。「1948年に世界保健機構(WHO)が発表した憲章」の訳(日本WHO協会)によれば、ウェルビーイングはこう説明されている。「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあること」と。

私たち人間は、心身ともに健康で幸せな状態でなければと説いているのだ。「SORANO HOTEL」では、“心にも体にも健やかであるライフスタイル”を提案し、もてなしやスパでのプロによる指導などのソフト面や、施設や充実したスパの存在、天然温泉などハード面の双方から、日本でも画期的な存在感を放つホテルのデビューとなった。


一人分のトリートメントが付いた「スパスイート」(86㎡)。ミニキッチンが付いた長期滞在向きの贅沢な部屋。

ウェルビーイングをこうしてホテルでコンセプトに謳う以上、まず健康志向を基盤にした本格的なスパ設備や、指導するインストラクターやスパドクター、セラピストなどの存在を始め、エコロジー的環境への配慮、積極的な“安心安全”への滞在の取り組み、さらに美味しさを追求する健康的な食事などが揃っていなければならない。

そのうえで、働くスタッフが共有する知識や健康志向のマインドが必要とされる。「SORANO HOTEL」には、幸運なことにそれらのほとんどが揃い、クリニックではないが、滞在して癒され、寛ぎ、楽しむアーバンリゾートとして快適だ。

ここにはスパドクターは常駐していないが、「健康科学」の学位を有するプロフェッショナルが、科学的な根拠と長年蓄積した知見・実績を基にボディリトリートを目指して個々にトレーニングプログラムを紹介している。日常、忙しさに紛れて自分を顧みる時間のないエグゼクティブには、むしろ“未病”の状態を知り、元気を取り戻す画期的なプログラムに出合えるかもしれない。

たとえば、“コンディショニング体験プラン”という宿泊プランが提案されている。カウンセリングから、「からだ本来の機能を回復することで、それぞれが目指す目的(シェイプアップやボディバランスの改善、肩こりや膝・ 腰の痛みの緩和・機能改善、筋力アップなど)が必然的に改善される」としたプログラムである。最新鋭の3D画像スキャンで体組織を診断し、それにより今の状態を知った上で、様々なコンディショニング・エクササイズが行われる。


スポーツジム内で行われる専属トレーナーとの“コンディショニング”。このプログラムは健康状態のバランスや持続性を重視するトレーニング。
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文=せきねきょうこ

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