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高級ブランド世界最大手の仏LVMHは9月9日、米宝飾品大手ティファニー買収計画を撤回すると発表した。これを受け、ティファニーは合意の履行を求めて米デラウェア州の裁判所にLVMHを提訴した。

LVMHが買収撤回を言い出したことは、驚きではなかった。同社は昨年11月、ティファニーを162億ドル(約1兆7160億円)で買収することで合意したものの、同社の価値を過大評価したと“後悔している”との見方があったためだ。

買収を撤回したい理由としてLVMHは、ティファニーが新型コロナウイルスのパンデミックのなかで事業運営を誤ったことや、米国からの報復関税の問題があるため、買収完了の時期を先送りするよう仏政府から要請されたことなどを挙げている。

だが、米法律事務所ダイケマのメンバーでM&A(合併・買収)専門の弁護士、ウイルヘルム・リーブマンによれば、現状ではティファニーがMAE条項(買収される側の事業に悪影響が及ぶ重大な問題が起きれば、買い手が取引を中止できることを規定)に該当するような問題を起こしたとは考えられず、裁判所にLVMHの主張を認めさせることは難しいとみられている。

正当な根拠に欠ける


LVMHは、新型コロナウイルスのパンデミックが続くなか、また米国内の各地で暴動が起きるなかで、ティファニーが適切な事業運営を行ってこなかったなどとして、反訴する構えだ。

だが、リーブマンによると、ティファニーは合意内容に明記された「政府規則に準ずること」との条項に従って店舗を閉鎖するなどしており、合意のとおり「通常の事業運営」を行ってきた。

さらに、LVMHはティファニーが損失を出しながら株主に配当金を支払ったことも問題視しているが、これも企業の通常の事業運営の範囲内の行動であり、買収撤回の根拠にはならないという。

リーブマンは、LVMHは買収価格の大幅な引き下げを狙っているとみられるが、ティファニーがそうした交渉に応じることはないと指摘している。

──だが、実際にはLVMHは、同社としては過去最大の規模となるはずだった案件を、ただ本当に中止にしたいだけなのかもしれない。

編集=木内涼子

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