結局はティファニーの勝ち?
ティファニーは、LVMHによる買収によって得られるはずの現金をひどく必要としている。だが、同社にとってそれ以上に重要なのは、LVMHのベルナール・アルノー会長兼CEOと同社による戦略的な運営だ。
ニューヨークを拠点とするブランド戦略コンサルタント、ラピダリウスの創業者、ベネディクト・オールドによると、LVMHは他に類のない「優れたブランドマネージャー」だ。
ただし、欧州の高級ブランド、ルイ・ヴィトンやクリスチャンディオールのモデルに従ってティファニーを立て直そうとすれば、最終的には大きな誤りとなる可能性が高いとみている。それは、もともと“高級”ブランドではなかったティファニーが象徴する、“米国の伝統”の独自性が、損なわれることになるためだという。
また、米コンサルタント会社、ウェスト・モンロー・パートナーズのM&A部門の責任者、ブラッド・ハラーは次のように述べている。
「160億ドルの値札は確かに高い。そして、LVMHがもはや、(ティファニーに)それだけの価値があると考えていないことは明らかだ」「だが、このブランドとその保有する不動産には、大きな価値がある」
ハラーによれば、ティファニー買収を断念すれば、それはLVMHにとって、機会の喪失につながる。両社は「顧客基盤が同一であり、多くのシナジーも、クロスセリングの機会もある」からだ。
この問題に仏政府を関与させたことからも、LMVHは「どうしても買収をやめたい」のだと考えられる。だが、前出のリーブマンが主張するとおり、この買収を撤回できる可能性はごくわずか、またはゼロと言ってもいいのかもしれない。