ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信


国際線にも波及するか


そんな戦略を発表したカービーCEOに対して、ジャーナリストのトム・コステロは、70年の歴史を持つ朝のニュースショー「TODAY show(トゥデイ・ショー)」のなかで、これまでペナルティを課されてきた消費者の意識を代弁して厳しく迫った。

「このコロナ禍のなかでこんな戦略を打てるのなら、なぜ、いままでやらなかったのか?」

その問いに対して、たった4カ月前に就任したばかりのカービーCEOは、「ある意味の賭けだ。会社の短期の利益目標からいったん離れ、長期の顧客満足にこうやって初めて寄り添うことで最後は勝てるだろうと思っている」と答えた。

ユナイテッド航空自体も、全従業員の3分の1にあたる3万6000人のリストラを計画している。この企業努力は、連邦政府から業界が長期にわたって補助金を受けて生き延びようとする際に、補助金を受け入れやすくしたい(大統領が補助金を決めても、議会に承認されなければならない。議会は、企業努力を認めないとやすやすと承認しないと見られている)という事情も背景にあると考えていいだろう。

そもそも、サウスウエスト航空などは、昔から変更ペナルティなどとっていなかった。同社のアンドリュー・ワターソンCOOによれば、変更をする際にかかる航空会社のコストは、切符代のほんの4%ほどのものだという。このように、やろうと思えばもっと前からやれたのではないかという、消費者の冷めた意識は根強く、ユナイテッド航空の英断に必ずしも大きな拍手が送られているわけではない。

しかし、コロナ禍によって「少しでも利益目標を達成できないと次々にCEOをクビにする」という、過剰な利益重視の「悪しき伝統」を見直す機会になったのは業界のためにもよかったという考えで、消費者はまとまっているようだ。

航空業界は、コロナ禍以降も、当分は厳しい長い冬の時代が続くと考えられている。特に、ディズニーランドやラスベガスへのバケーション旅行はワクチンの開発とともにすぐ戻るとみられるものの、ドル箱であるビジネスクラスは、2019年のレベルに戻るまで4年はかかるとの見込みがある。

なぜなら、ZoomやGoogle Meetなどのツールによって、リモートによるビジネス会議が浸透したからだ。「リアルな会議をしないことで営業力を失った」などの具体的な弊害が出てくるまで、人々はなかなか航空機を利用しないからだという。

ちなみに、気になる国際線についても、「最低でも年内は変更ペナルティを取らない」とユナイテッド航空のカービーCEOは語った。この新しい戦略が、官・民・消費者ともに好評な新スタンダードとなり、国内線と同様、永久に変更ペナルティを取られなくて済むとなれば、太平洋を渡る乗客も確実に増えるのではないか。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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