カリフォルニア大学入試で「ペーパーテスト」廃止へ 揺れるアメリカの受験制度

カリフォルニア大学入試で全米共通のペーパーテストが廃止へ(Getty Images)


原告団の代理人を務めたアビゲイル・グラバー弁護士が、ロサンゼルス・タイムズの「UC must immediately drop use of the SAT and ACT for admissions and scholarships, judge rules」という記事のなかで述べているところによれば、点字による試験や手書きの小論文が書けない人のためのコンピューターなど、様々な背景を持つ障がい者が平等に試験を受けることができるようにする措置は、高校のテストセンターでのみ利用可能であったが、現在はコロナ禍の影響で利用できなくなっているという。


コロナ禍で障がいを持つ人々が「SAT」を受験することが困難になっている(Unsplash)

また「SAT」テストにおいて障がい者用の措置を受けるためには、障がいを持つ生徒であるという認定を高校のカウンセラーから受ける必要がある。しかし、カリフォルニアの公立学校では十分な数のカウンセラーが配置されているとはいえず、またパンデミックのあいだは高校のカウンセラーに会うことが困難なため、措置を受けるための書類を手に入れることができないという問題もあると、グラバー弁護士は指摘している。

判決は他の州にも波及するか?


カリフォルニア大学は「裁判所の判決には失礼ながら同意しかねる」と声明を発表。「今回の差止命令は、適切かつ包括的なアドミッションポリシーを実施するための大学の努力や、多様な背景や経験を持つ学生を惹きつけて入学させる大学の力を妨げる可能性がある」とし、今後さらなる法的措置が必要かどうかを検討中だとしている。

対して原告側の弁護士マーク・ローゼンバウム氏は「この歴史的な判決は、カリフォルニア州の多くの有色人種の学生、障がいのある学生、そして低所得世帯の学生からカリフォルニア大学への入学の公平な機会を奪っていた人種差別的なテストに終止符を打つ」とロサンゼルス・タイムズで述べている。

アメリカでは去年、セレブな親たちが高額の賄賂で子供を名門大学へと不正入学させていたスキャンダルが発覚したが、その際に話題になったのも「SAT」などの共通テストであった。いま入試制度をめぐる公平性の問題には大きな注目が集まっている。

今回のカリフォルニア州での判決の影響が、これから全米へと波及していくだろうという見方も十分にできる。アメリカの入試制度に大きな変動の時がやってきているのかもしれない。

文=渡邊雄介

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