なぜ2人の中国人女性はDMMグループ4000人のトップに立てたのか

左:肖軍(しょうぐん)さん 、右:林(りん)ショウブンさん


受賞理由について


さて、大賞を受賞したこの2人、一体どのような成果をあげたのだろう。


林(りん)ショウブンさん

林ショウブンさんは、2018年にDMM.comに入社し、現在はエナジー事業部に所属。太陽電池、パワコン、架台電材など、太陽光発電所に関わる関連部材の国内営業を担当している。

取材中は小さく笑い、優しく控えめな印象を受けた林さんだが、その営業手法は実に泥臭い。1日の電話は60件、メールのやりとりは150回。これを毎日繰り返しているというので驚きだ。商品の価格や性能を徹底的に調べ上げ、「絶対に損はさせない」提案を心がけているのだそう。このようにして、日本国内の取引先と着実に信頼関係を築いている。

今年は単価が下がるメガソーラー事業において、前年と比べて2倍以上の商品販売を達成。新規取引先を獲得するだけでなく、取引がなくなっていた、いわゆる「休眠状態」の取引先にも積極的にアプローチし、既存取引先の売上を前年比173%に向上させることにも貢献している。事業部の売上と粗利益の大幅アップに多大なる貢献をしたとして、見事他薦で大賞に選ばれた。

二児の母でもある林さんの活躍を、同じく子育て中のメンバーは「子育てしながら働くパワフルさと、言語の壁を言い訳にしないタフさがずば抜けている」と称えている。受賞について、林さんも「今まで自分が何か特別なことをしたと思ったことはなかったけど、表彰されて自信がつきました」と喜んだ。


肖軍(しょうぐん)さん

一方、肖さんは2016年にDMM.comに入社。現在は、エンターテイメント本部で、アニメのライセンスを海外のコンテンツ配信会社、ゲーム会社などに販売する仕事を担当している。クライアントは、中国企業や欧米企業など。海外全域が担当エリアだ。

「私は中国語が母国語だから、中国企業と円滑にコミュニケーションがとれるのは当然ですよ。決してすごいことではない」と謙遜する肖さんだが、チームの業績向上に彼女が大きく貢献したことは、審査会でも全員一致で認めたほどだ。

明るく快活なキャラクターと親しみのある笑顔は人気で、取引先からお褒めの言葉が届くという。アニメをはじめとするコンテンツの海外番販の売上実績や番販スキームの達成という実績だけでなく、肖さんの人柄がDMMと各社のアライアンスを深める大きな一助になったとして、他薦で大賞に選ばれた。

受賞は自分ひとりの力ではないという肖さんだが、チームからは「自分のメインの仕事以外にも顔を出して笑顔で取り組む姿勢がありがたい。いつも周りのおかげという肖さんですが、自信をもって受賞を受け止めていただきたい」というメッセージが寄せられた。

ふたりが日本に来た経緯


優秀で謙虚な二人だが、日本へ来た経緯や時期、その理由は異なる。

来日が早かったのは、林さんだ。安徽省(あんきしょう)出身の林さんは、高校卒業後、両親の勧めで日本の大学へ留学するために日本へやって来た。来日した当初は、全く日本語を話せなかったという。



来日した最初の日について、林さんはこんなエピソードを話してくれた。その日、林さんは吉祥寺にある家まで歩いて帰ろうとしたところ、道に迷い、気づけば三鷹まで来てしまった。道がわからず、雨まで降り、今にも泣きそうなときに、地元の日本人が優しく助けてくれたのだ。家まで送ってくれ、お菓子やお茶までくれたその方の優しさを感じ、「日本人って優しいな、日本に来てよかった」と感じたことを鮮明に覚えているそうだ。

こうして林さんは、日本での生活をスタートさせた。両親の勧めとは言え、自分で決めた日本行き。教育費を捻出するために一生懸命働いてくれた両親のためにも、「何があっても我慢して頑張る」と決心しての来日だった。
次ページ > 「日本人は超親切でした」

インタビュー=谷本有香 文=伊藤みさき

ForbesBrandVoice

人気記事