石破茂氏が考える、テクノロジーと政治のあり方


──「サピエンス全史」の著者ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、人類はいずれ新型コロナを克服するだろうが、これはテクノロジーの戦いであると言っています。政府が科学で社会やウイルスをコントロールすることの重要性を説く一方で、石破さんと同じく、プライバシー管理による監視国家の危うさを指摘しています。国際協調による科学技術なくして、感染症に勝利することはできないでしょう。

国内でも、テクノロジー活用の政策を実行していくべきでしょう。まずはコロナ対策で、台湾の成功から学び、ウイルスに対応する日本型CDC(疾病予防管理センター)の設立、特措法の改正等、国民、科学(医療)、政治の3者で“信頼と納得”のサイクルを回して推進していきたいと考えています。



──石破さんの大きな政策である日本の地方創生でも、テクノロジーとの掛け合わせが重要になってきます。

コロナ禍によって、人が都市に集中することの脆弱性が顕在化しました。今までは地方、農林水産業、高齢者、女性のポテンシャルが活かされなくてもいい時代が続いてきました。今こそこれらを最大限に活かす必要があります。これまでの歴史を振り返っても、江戸時代は分権政策により、各地方が多様な魅力を発揮し、人とモノが江戸に集まりすぎない仕組みで、265年の泰平の世が実現したのです。

東京一極集中から脱却して、世界一高齢化が加速する日本の地方から、医療・社会福祉の分野でテクノロジーを駆使したシニア社会モデルを模索し、できるだけ早く解を見つけることです。

そのためには、各自治体の成功例・失敗例を比較できるデータと、それを検証し地元でファシリテートできる地方議員・職員・市民の存在が不可欠です。全国には1718市町村あるが、自分のまちしか知らない人が圧倒的です。地方の付加価値を上げていくために、国のRESAS(地域経済分析システム)など、ITを活かせる人材の輩出は急務と言えます。

──AIによって人間の仕事が奪われるのではないかという危惧も指摘されています。これからの時代、AI化が進み、仕事がない人が多数いる社会のあり方・政策を打ち出すことが、政治の役割だとも言えます。AIによって企業利益が増え、税収が増大した国家財源をもとにベーシックインカムを導入する道筋もある。ベーシックインカムの実証実験も、いくつかの国で行われています。

今回のコロナ対策給付金も、ある意味ベーシックインカムと言えるでしょう。しかし、ベーシックインカムを導入するには、低所得層の所得増や勤労へのインセンティブ設計が重要です。マクロ的な効果検証をしないと、ベーシックインカム政策は、ともすれば政治家の選挙の道具にされかねません。あるべき形を提示して、有権者のきちんとした選択を仰ぎたい。
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文=金野索一

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