神経科学者が「退屈は脳の健康に良い」と言う理由

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レンセラー工科大学認知科学部の研究者で神経科学者のアリシア・ワルフは、脳の健康のためには時々自分を退屈させることが重要だと語っている。彼女によると、退屈することで私たちの社会的つながりが改善する。

また脳には、私たちが何かをすることから解放された状態でオンになる既定のネットワークモードがあることを、社会神経学者らは発見している。退屈さは創造的なアイデアを育てることができ、低下しているエネルギーや仕事におけるあなたの魅力を回復させるとともに、まだ初期段階にある仕事のアイデアを発展させるためのインキュベーション(ふ化)期間を与えてくれる。

退屈で空虚、無用に見えるこうした瞬間には、いつもそこにあった未発達の戦略や解決策が関心を集め、活気づく。また脳は、私たちがあまり酷使し過ぎていないときに、本当に必要な休憩を得ることができる。有名な作家たちは、家具を動かしているときやシャワーを浴びているとき、草むしりをしているときに特に創造的なアイデアが浮かぶと語ってきた。

やることリストの代わりにその瞬間を楽しむ時間を


イタリアでは、これに名前がついている。それは「il dolce far niente(何もしない甘さ)」というものだ。業務やスケジュールによって自分が定義される米国には同じ表現がない。最も近いものは「killing time(暇つぶし)」だ。しかし、「何もしない甘さ」にはより多くのものが必要だ。意図的に物事を手放し、何かをすることではなくその時間を楽しむことを優先しなければならない。

何もしないことは、美しい音楽作品に欠かせない「間」と対比されてきた。音がない瞬間がなければ、音楽はただの騒音になるだろう。「何もしない甘さ」により、脳には充電に必要な休憩が与えられ、より生産的になることができる。

そのため、時代遅れの英語のことわざである「暇な頭は悪魔の作業場」は忘れ、やることリストとともに、それぞれの瞬間をマインドフルに過ごす時間を作ろう。予定の間に、体を伸ばして深い息をつけるような余裕や、近所を歩いて頭をスッキリさせる時間を持とう。あるいは瞑想(めいそう)したり祈ったり、机の前で椅子に座ってヨガをしたり、草の伸びを観察したり、あるいはただ宇宙について考えを巡らせたりしてもよい。

脳は義務や急いでしなければいけないこと、解決したり達成したりすべきことがない暇な時間と共存することで、より幸せで健康的になるだろう。ブレーキを踏み、ただ楽しみのためだけに何かをした後には、また頑張る準備ができている。そうすれば、レジリエンス(回復力)や創造性、生産性が大きく上がるはずだ。

翻訳・編集=出田静

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