経済・社会

2020.09.13 12:30

愛着障害という名の「心の渇望」にも着目 三位一体で獄中鑑定へ|#供述弱者を知る

連載「#供述弱者を知る」


翌日、2017年2月10日、私と小出君とのメールのやりとりから、その進展ぶりが分かる。10日の送受信トレーに残っているメールを見ると、最初に私から「事件の参考資料」とのタイトルでいくつかのデータを添付して送っている。 
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【2月10日9:32】秦⇒小出

昨晩は遅くまでありがとう。添付資料は、以下の通りです。(1)西山受刑者の言行録→取材や公判記録に基づく (2)記事検索→おおよその事件の概要を示した当時の新聞記事(3)勉強会採録→弁護団の考え方を示す勉強会の内容 (4)主な手紙の抜粋。とりあえず、以上です。

【2月10日15:28】小出⇒秦
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確かに資料受信しました。連休のうちに読んでおきます。空けておくのは2月26日、3月5日の両日曜日だったね。どちらか決まり次第教えて下さい。

【2月10日18:50】秦⇒小出

了解しました。記者に指示してあるので、週明けには返事があると思います。これで、法(井戸弁護士)医(貴兄)報(我々のチーム)の三位一体(さんみいったい)に向けて進めそう、と心強く思っています。 よろしく!


法、医学、報道による「三位一体」戦略


「法、医、報による三位一体」は、前夜、小出君と話している時に、彼から出た言葉だった。言い得て妙。なるほど、うまいことを言うなと思ったものだ。三位一体とは、キリスト教の言葉から転じ、異なる3つのものが緊密に結びつき、心を合わせて1つになることを意味している。

警察と検察がでっち上げた「虚構の真実」をジャーナリズムの力だけで突き崩そうとしても、現実にはそう甘くはない。障害という視点で切り崩すには医学の力が不可欠だ。小出君という、その道のエキスパートが加わったことによる戦力アップは計り知れない。

だが、7回の裁判で認定された虚構の真実という分厚い壁を破るには、それだけでもまだ十分とは言えない。舞台はあくまで法廷。例えて言えば、報道は「場外乱闘」を仕掛けているにすぎない。一定の打撃にはなっても、裁判所によって再び有罪認定が下される可能性はある。その可能性を消すことができるのは、法廷に立つ弁護人しかいない。すでに、弁護団長の井戸謙一弁護士(66)は、記者たちに協力的な対応をしてくれていた。

小出君と夜まで打ち合わせした翌日は、「秦⇔小出」のメールと同時進行で、私から角記者に獄中精神鑑定にチャレンジするという新展開を伝えている。
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文=秦融

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