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2020.11.10

伝統工芸で活路を開く!独自の世界観を確立した「職人の至芸」

古今東西の人々の心をとらえる漆器や陶磁器、七宝、彫金など、日本には優れた工芸品がある。和の美意識をよく知り、親しむことは、ライフスタイルが欧米化した現代の日本では、いまや文化になっているともいえる。セイコーの最上位ブランドのひとつ「クレドール」は、日本工芸の粋を取り入れ、時計の新たな可能性を切り拓いてきた。果たして時計は、時を刻む美術品たり得るのか。


マリー・アントワネットも愛した日本の漆


蒔絵(まきえ)は、器物に漆で文様を描き、金銀の粉末や色粉を付着させる、日本で独自に発展してきた工芸の技術。平安時代に隆盛し、戦国時代にはキリスト教の宣教師たちによってヨーロッパへもたらされた。フランス王妃マリー・アントワネットが蒔絵の一大コレクションを所有していたことは、美術愛好家の間ではよく知られているところ。いまでも漆器を英語で言う場合、lacquer wareではなくjapanで通じるのは、こうした歴史的背景があるからだ。


左:印籠をモチーフにした「耀」。18Kと24Kのゴールドとプラチナに、青貝の螺鈿を組み合わせた。右:18Kホワイトゴールドにプラチナ粉を用いた蒔絵をほどこした「翳」。

クレドールの精華のひとつに、漆芸をほどこした時計がある。そのスターターともいえるものが、1987年の提げ時計(懐中時計)、「耀(よう)」と「翳(えい)」だ。これは国宝や重要文化財などの修復を手がける老舗、小西美術工藝社とともに製作されたもので、蒔絵、螺鈿(らでん)、截金(きりかね)、象嵌(ぞうがん)といった細密工芸の技がほどこされた貴重な一点物である。

この「耀」と「翳」は、高級ドレスウォッチのブランドとして拡大を続けていたクレドールに、ひとつの道を指し示した。時計と日本の美との融合である。企画者としてこのブランドに長年たずさわり続ける浅山智弘氏(セイコーウオッチ 商品企画一部)に、クレドールと日本工芸との邂逅について語っていただこう。


浅山智弘氏は1982年、第二精工舎(当時)に入社。東京藝術大学美術学部の工芸科で彫金を専攻したことから、第一線の工芸家たちとの交流がある。

浅山「時計産業の中心地スイスとの競争は、最初のうちは性能の戦いでした。それが、やがて感性の戦いに変化していきました。重要なのは“高額品”を作ることではなく、“高級品”であることだとわかってきたからです。高級品とは、人に誇りと感動を与えるものですよね。そうした値段では表せない付加価値を加えれば、クレドールの世界は花開くと考えたのです」

かつてはデザインも手がけた浅山氏。1986年、ジュエリー界のアカデミー賞とも呼ばれたデビアス社主催のダイヤモンド・インターナショナル・アワードで、浅山氏がデザインした腕時計が受賞。ダイヤモンドを惜しげなくちりばめたゴールドのブレスレットには漆がかけられ、つややかな黒がダイヤモンドの輝きを際立たせている。


国際デザインコンテスト、ダイヤモンド・インターナショナル・アワードで受賞を果たしたブレスレットウォッチ。漆黒を背景に、光のしずくのようなダイヤモンドがしたたり落ちていくデザイン。

浅山「ゴールドのブレスレットに漆、という難易度の高さで、実製作はかなり難航しました。ですが、人間国宝の松田権六先生を中心に結成されたパイロット萬年筆(当時)漆工芸室の國光會と協働できたことで、一気に実現したのです。この作品ができたことは、大きな自信となりました。と同時に、伝統工芸の技を腕時計に用いるという新たなスタイルへの道が拓けたのです」

その後「刀」「唐破風」「金閣寺」「印籠」など、日本古来の様式美を取り込んだ個性豊かなジュエリーウォッチが次々と生み出された。白眉は、2001年にセイコー創業120周年を記念して限定発売された漆塗りの堤時計(懐中時計)だ。表面は黎明の海を、背面は小夜の海を蒔絵と螺鈿で描いた逸品である。


2001年のセイコー創業120周年記念モデル。左:海からの日の出を描いた表側。右:静かな夜の海を描いた裏側。ともに蒔絵と螺鈿の技を駆使している。


浅山「これまで陶磁器のノリタケ、尾張七宝の安藤七宝店、漆器の山田平安堂など、一流ブランドと手をたずさえてきました。そして感じたのは、日本の匠は妥協を知らない、ということでした。道具がなければ自分で作るし、材料も最高のものにこだわる。そして無駄とも思えるほど手間がかかっても、きちんとやり抜く。いかに“すばらしい無駄”をやってみせるか。それが感動を呼ぶ高級品を作る上で大切なことではないでしょうか」

妥協を知らない名匠───。セイコー初となるトゥールビヨンモデル「FUGAKU」を手がけた蒔絵師、田村一舟氏もそのひとりである。

世界中の腕時計の目利きが目を見はる


「FUGAKU」が発表されたのは2016年。夜明けの空、輝く波しぶき、雲と千鳥、青海波を描き、その個性ある美しさに称賛の声が多く寄せられた。漆芸は、加賀蒔絵の第一人者である田村氏。くだけ散る波頭の彫金は、セイコーの彫金工房を率いる照井清氏の手による(本項のトップ画像が「FUGAKU」である。国内での販売は終了している)。


加賀蒔絵師、田村一舟氏。金沢に伝わる伝統の漆芸を継承し、独自の細密技法を駆使した叙情性豊かな表現を得意とする。

田村「これは挑戦でした。これまでやってきたこと以外の要素が求められていましたから。蒔絵を盛り上げすぎると針に当たってしまうので、漆の厚みが100分の1mm単位で決まっているなど、精密機械ならではの制限に最初は驚かされました。ですが、数多くの人々がたずさわってひとつのモデルを完成させる時計作りへの参加は、やりがいのあることに思えたのです」

江戸時代、加賀藩主の前田利常は日本のあちこちから優れた職人を招いて美術工芸を奨励したという。それは漆芸や陶芸のみならず、分野は多岐にわたり、加賀藩の美の文化は総合芸術として花開いた。クレドールもまた、多くの人々の手による総合芸術であると田村氏には思えたのだ。


左上:ロゴの「R」の部分を粘度の高い漆で描く作業。蒔絵筆は自作。右上:漆の上に純金の粉を蒔く(このため“蒔絵”と呼ばれる)。左下:鯛牙(たいき)と呼ばれる道具で金を磨いて光沢を出す。右下:鯛牙とは、魚のタイの歯である。これらももちろん自作。

田村「文字盤のロゴはプリントではありません。蒔絵です。1文字描くのに30分くらいかかっています。これに使う極細の蒔絵筆を手に入れようと画材屋をいくつもまわってみましたが、足を棒にしても納得のいくものがなく、自分で筆を30本ほど作ってみて試しました。何とか使えたのは、そのうち2本ほどでしたが」

道具がなければ自分で作る。材料も最高のものでなければ満足しない。


田村「漆器に使われる漆は、いまはほとんどが中国からの輸入ものですね。ただ、ほんのわずかですが、国産の質のよい漆が岩手県で採れるのです。“FUGAKU”にはそれを使っています」


蒔いた金を鯛牙で磨く田村氏。顕微鏡を使い、息を詰めて行う細かな作業だ。

ロゴはもとより、微に入り細をうがったクレドール側の要望に対し、田村氏はできないといったことがないという。あれこれ試した末に、こういう形でできる、こういうやり方でもできる、とさまざまな提案を返すのだ。クリエイティブな双方向のやりとりが「FUGAKU」に磨きをかけた。

田村「よくご覧になっていただきたいのは、背景の空です。赤紫から紺への微妙なグラデーションを出すのが非常に難しく、ひたすら試行錯誤を繰り返してやっとうまくいきました。漆というのは、塗ったばかりのときと乾いたときではわずかに色が違うのです。また、雲と千鳥、青海波は螺鈿で、白蝶貝を切ってはめ込んでいます。ケースの側面も螺鈿ですね。漆はとても自由な素材で、多彩な表現ができますが、そこをクレドールに理解していただけたのがうれしいことでした」

新たなコラボレーションは伊万里鍋島焼と


スイスのバーゼルワールドで発表され、時計愛好家たちを瞠目させた「FUGAKU」。クレドールはその後も表現の幅を広げ、刀装具に用いられた江戸時代の金工の技、木目金(もくめがね)のモデルを2019年に発表。そして2020年は、さらなるチャレンジングな協働がスタートした。

浅山「佐賀県窯業技術センターが開発した特別な強化陶土を活用して、ごく薄い有田焼の文字盤を製品化しました。新旧の技術の融合ですね。それを使った文字盤の製作を依頼したのが、伊万里鍋島焼の名窯、畑萬陶苑です。すばらしい出来ですよ」


2020年の新作「伊万里鍋島焼ダイヤル限定モデル」の文字盤。墨でストライプを描き、顔料をかけると墨が顔料をはじく。これを焼くと墨の部分が白く抜けた紋様となって現れる。これが墨はじき。

強化陶土で作った約10mm厚の陶片に、墨はじきと呼ばれる伝統技法を用い、滝の流れをイメージしたストライプを描いて焼き上げる。それを1mm以下にまで薄く削って素地とする。時目盛りはもちろん手描き。滝の水けむりは、金、プラチナ、パールホワイトを上絵付(うわえつけ)して表現した。焼成は10回以上にも及ぶ。ときにミクロン単位の加工精度が必要とされる時計製造に、ニュアンスのある装飾を手仕事でほどこすのは容易ではない。

近年、こうした伝統工芸を取り入れた腕時計はメティエ・ダール(芸術的な手技)などと呼ばれ、スイスでも盛んに作られるようになった。だがクレドールでは、1980年代からすでに伝統工芸に学び、新たな美意識を創出し続けている。心を揺さぶる感動を、人の技で誘うこと。それによって時計は時計であることを超え、手のひらに乗るほどの小さな美術品として光彩を放ち始めるのだ。

問い合わせ:セイコーウオッチ お客様相談室(クレドール) 
☎︎0120-302-617
www.credor.com




クレドール リネアルクス 伊万里鍋島焼ダイヤル限定モデル GBBY985
畑萬陶苑による伊万里鍋島焼の文字盤を採用。水暖簾(みずのれん)と呼ばれる滝の美景をイメージしたデザインがため息を誘う。

手巻き機械式。PT、磁器ダイヤル。クロコダイルストラップ(濃紺)、京都レザーアリゲーターストラップ(墨流し染め)も付属。ケース径38.0mm。数量限定10本。4,500,000円(税別)※商品画像は京都レザーアリゲーターストラップを装着。
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クレドール シグノ GBAQ961
エナメルの老舗、安藤七宝店の協力を得て製作された文字盤。銀の地板に模様を刻み、半透明の5色の釉薬をかけて仕上げた。

手巻き機械式。18KWG、エナメルダイヤル。クロコダイルストラップ。ケース径36.6mm。1,900,000円(税別)
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クレドール シグノ 螺鈿ダイヤルモデル GCBE993
漆の黒を夜空に見立て、貝の螺鈿細工を星々に見立てたデザイン。12、3、9時の目盛りは螺鈿、それ以外の目盛りは手描きの高蒔絵を田村氏が手がけた。

手巻き機械式。SS、螺鈿ダイヤル。ケース径37.0mm。クロコダイルストラップ。850,000円(税別)
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Promoted by クレドール / text by Keiko Homma / photos by Ryoichi Yamashita (Battuta)

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