「東大債」発行から考えるこれからの大学のあり方


日本国内がコロナ禍に見舞われる直前の2月半ば。五神真東大総長は内々の講演会で、東大債発行に向けて、関係各方面への働きかけと具体的な検討に入っていることを語った。まずは政令改正という難物がある。文部科学省はもちろんのこと、財務省との交渉も不可欠だ。

大学内部でも、明確な財務・投資計画の策定を行わなければならない。多様な意見をもつ、全部局のうるさ型の教員たちへの説得も難事である。

当時、総長が語った印象的な言葉がある。「大学債は東大だけで終わってしまったら意味がない。すべての国立大学に広がることが大切なんです」。

債券発行を公表した翌日、東大はグローバル・コモンズ・センターを発足させた。実空間とサイバー空間の両者で、地球規模の人類共有財産(グローバル・コモンズ)の持続可能性を追求しようという試みだ。

梅雨明けの本郷キャンパス。せみ時雨に耳を奪われながら、遠い学生時代を振り返った。「当時の先生たちの感覚では、今やサバイバルできない。大学の歴史が一変するな」。


川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。日本証券業協会特別顧問、南開大学客員教授、嵯峨美術大学客員教授、海外需要開拓支援機構の社外取締役などを兼務。

文=川村雄介

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