迫り来るデジタルシフトの波 流行りのDXの本質とは何か

近年しばしば耳にするようになった「DX」。その本質とは一体なんなのだろうか?(Unsplash)

インターネットが登場して4半世紀が過ぎようとしているいま、私たちの生活は大きく変貌している。コミュニケーションは電話からメールへと変わり、現在はチャットが主流となった。情報収集でもインターネットやSNSを利用することが当たり前の時代となり、新聞や地図を見る場合もスマートフォンさえあれば済むようになった。買い物もネットショッピングを利用することが一般化し、飲食店の予約などもワンクリックで簡単に行えるようになった。

これらの変化は「デジタルシフト」や「DX」などと呼ばれており、年々その傾向は加速している。デジタルシフトは今後も、私たちの生活に波のように押し寄せ、今からは想像もできないような社会的変化をもたらしていくに違いない。

「デジタルシフト」の本質とは何か? 


とはいえ、「デジタルシフトとは何か」と正面から問われると、返事に困ってしまう人も少なくないだろう。私たちの身の回りには、既にこんなにも「デジタル」が溢れているにも関わらずだ。IT化を進める企業のコンサルティングを行なっている私は、多くの経営者の方々から「デジタルシフトとは何か?」という質問を受ける。

このような質問に対して、私はデジタルシフトを「アナログ時代に存在した時間・距離・量・方向の制約を解放すること」だと説明している。ショッピングを例に考えてみよう。

まずデジタルシフトは「時間的な制約からの解放」だ。昔はお店が開店しているときにしか買い物はできなかったが、今では24時間365日いつでも、パソコンやスマホさえあれば買い物をすることが可能となった。

次に「距離的な制約からの解放」だ。かつては実際に商品があるその場所にまで行かなければ買い物はできなかったが、今では地球の裏側で販売されている商品でさえ購入することが可能となった。

3つ目は「量的な制約からの解放」。一つの店舗で抱えることができる在庫には限りがあったが、今ではバーチャルで商品を無限大に品揃えすることが可能となった。例えば、大手通販サイト・アマゾンでは、日本でも2億を超える商品を買うことができる。

4つ目は「方向の制約からの解放」だ。チラシやTVコマーシャルなどで、売り手側が一方的に不特定多数に向けて広告を出していたが、今ではインターネットを通して、顧客の好みに合わせた広告をダイレクトにだすこと可能となった。

このように、アナログ時代には存在せざるを得なかった制約から、人々が解放されるという点こそが、デジタルシフトの本質なのである。 
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文=鈴木康弘

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DXで日本の”ものづくり”を再生せよ

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