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2020.09.14

高価格でスペックの劣るLED電球「Siphon」が支持を集める理由

電球古来の美しさをLEDの時代にも繋げたい


みなさんはLED電球と聞くとどのようなイメージをするだろうか。

一般的には「長寿命」や「省エネ」というような機能的なメリットの他に、「光が直線的」や「光に柔らかさが無い」など、少しネガティブなイメージを持っている人も多いと聞く。

デザイン面を見てみると、LED電球は従来の伝統的な電球のデザインとは異なる物が多い。省エネ性能などの機能を高めるためにヒートシンク(放熱部)を設けたり、十分な基板スペースを確保したりする必要があるためだ。

そんな中、私、戸谷大地が代表を務める「ビートソニック」では失われつつある“電球古来の美しさ”をLEDで実現した「Siphon Trad」(サイフォントラッド)というLED電球を開発し、応援購入サービスMakuakeにて先行販売中だ。

昔ながらのデザインを現代の技術を用いアップデートさせることにより、インテリアの世界に対して新しい提案となるプロダクトになっている。

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震災以降急拡大したLED照明市場と今の課題


LED照明市場は震災以降、省エネの波に乗って大きく成長したが、それ故の課題もある。

大手メーカーは「長寿命」や「省エネ」といった性能面を重視した開発を進める一方で白熱電球の生産を中止している。白熱電球なんて今どき前時代的なものに思えるかもしれないが、今でも白熱電球は空間演出として使われ続けている。

白熱電球には独特の雰囲気があり、ほんのり光らせることで住居や商業施設で落ち着いた空間を創りだすことができる。街の飲食店やホテルでこのような用途で使われている電球を見たことのある方も多いだろう。私たちが普段仕事を共にする設計士の中にも、白熱電球を空間演出のために好んで使う人はとても多い。

少し大げさな表現だが、照明メーカー各社が急速に発展したLED市場に資源を集中させる一方で、空間演出の広く使われている白熱電球の供給は激減し、全国の設計士が困っているという構図が見て取れる。

では、なぜ空間演出用の白熱電球はLEDに置き換わっていかないのだろうか。それは、LEDの意匠性に起因する。LED市場自体が省エネ性能を一番の売りにして成長したので、省エネ性能に最適化した進化を遂げてしまっているのだ。

電子部品への負荷を考慮し、電球側部にヒートシンクを設け、より効率的に照らせるように一方向に光を集中させている。これでは従来の白熱電球が持っていた、空間を落ち着かせるような雰囲気とは逆方向の進化だと言っても過言ではない。

家電量販店の照明売り場を見渡しても画一的なデザインの電球が並び、決して多様性に富んでいるわけではないのは一目瞭然だ。要するに極端に性能重視&デザイン軽視の進化を遂げてしまったのである。

そんな照明市場に一石を投じたのが、2015年に発売したLED電球「Siphon」(サイフォン)だ。

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Siphonの軌跡


ビートソニックは2015年にLED電球「Siphon」を開発・発売し、この課題に向き合っている。創業は1993年、カー用品メーカーとして誕生したが、LED照明市場に大きな可能性を感じ、2010年代に照明市場に参入した。

創業以来、多くの特許を取得しており、高い技術力とアイデアで潜在的なニーズに光を当てるのが得意なインディーズメーカーだ。
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文=戸谷大地

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