つまり、起業家にとって肝心なのは、どの事業会社/CVCとパートナーシップを組めば、成功する可能性が最も高いのかを見極めることです。これにはいくつかの方法があります。
1つは、経営幹部がどれくらいディスカッションに関与しているかを見る方法です。スタートアップへの投資に対してトップダウンの強いサポートがあれば、多くの場合、他の部署へもそのサポートが波及します。ただの投資担当チームによる投資ではなく、経営幹部によって決められた会社全体の方針になるからです。関与している幹部がその事業会社の創業メンバーであれば、なおさら良いです。
かといって、経営幹部が関与しなければシナジー戦略が必ずしも失敗に終わるというわけではありません。経営企画部や、オープンイノベーション部署などの優れたメンバーの活躍よって、スタートアップ提携が成功する例もあります。問題は、そのような相手をどうやって見極めるかですが、これには1つ簡単な方法があります。候補となる部署が過去に投資したスタートアップについて調査することです。それらのスタートアップの起業家たちから直接話を聞いたり、他の投資家から事例などの情報を集めたりしてみましょう。情報を集めることで、期待している結果が得られるかどうか、より確信を持って判断できるはずです。
また、投資をパートナーシップから切り離して考える方法もあります。事業会社/CVCとのパートナーシップを投資と関連づけて考えがちですが、実際は資本提携がなくても成功しているパートナーシップはたくさん存在します。それらのパートナーシップが実現できているのは、双方の目標実現に向けて本質的かつ明確なメリットがあるからです。現場のチームを含め、関係している人たち全員にメリットがあるのです。つまり、スタートアップ側の目標が相手の会社との協力によるシナジー効果である場合、投資抜きのパートナーシップを提案してみることで、相手もシナジーに対して同様の姿勢であるかどうかを確認できます。明確なメリットが存在し、シナジーへ向けた体制が整っているなら、投資自体はもはや判断の要素として重要ではありません。最初はパートナーシップだけを結び、順調であれば次のラウンドで出資を受け入れるという提案も良いでしょう。しかし、投資が必須条件だと相手側の担当者が返答した場合、パートナーシップも成功しなかった可能性が高いと考えた方がいいかもしれません。
シナジーは、スタートアップが事業会社から出資を受け入れる数多くの理由の中の1つに過ぎませんが、おそらく最も注目されることが多い要素です。次回以降の記事では、信頼性やネットワーク、アドバイスなどの、他の戦略的に重要な要素についても説明していきます。
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