ビジネス

2020.09.09

事業会社から調達して本当にシナジーが生まれるのか?

先週の記事でも書いたように、私はスタートアップの起業家からよく「〜という事業会社/CVCから資金調達することについてどう思う?」と聞かれます。この質問への答えを出す前に把握しておくべきこととして、先週は3つのタイプの事業会社/CVCについて説明しました。今回の記事では、事業会社/CVCがスタートアップに投資する最も大きな理由の1つである「シナジー」について説明したいと思います。

シナジーは、起業家だけではなく、事業会社/CVCからも投資のメリットとしてあげられる理由として、おそらく最もよくあるものです。新しいプロダクトやテクノロジーの共同開発、互いのプロダクトやサービスを組み合わせた新規事業など、シナジー効果を生み出すあらゆる活動を指しています。シナジーへの期待が、事業会社からスタートアップ市場への近年の資金の流れを牽引している最大の要素であると言ってもいいかもしれません。

スタートアップにとって、候補の中から最終的に組むべき事業会社を決めるのは簡単ではありません。ディスカッションが探り合いの段階で長引いてしまったり、シナジー効果を期待したはずが、実質的に何も実現しない、もしくは計画に遠く及ばない効果しか得られないような投資を決行してしまったりすれば、お互いに多くの時間を無駄にしてしまいます。これらの失敗の主な要因となるのは、投資担当チームと、実際にシナジーを生み出す現場の人たちとの間にある根本的なインセンティブや事情の違いです。

投資担当チームは、多くの場合、投資を実行しなければならないというプレッシャーを受けています。あらかじめ予算を設定されていることが多く、与えられた資金を一定期間内に使い切るという目標が前提としてあります。バランスシート型の投資家(先週の記事を参照)の場合、次の人事異動までがタイムリミットかもしれません。シナジーを狙って投資を実行したとしても、通常はその成果を生むまでに時間がかかるため、投資の実行自体が成果の指標になってしまい、結果的に投資担当チームもそれをベースに社内で評価されがちです。

一方で、現場の人たちは狙っているシナジー効果を実際に実現しなければなりません。評価に関しても、投資そのものではなく、シナジー効果による該当部署への貢献が重視されます。例えば、売上への実質的な貢献やネット・プロモーター・スコアの改善、重要な新プロダクトの開発につながったかどうかなどが評価の対象になり、それらの期待に応えるべく行動することになります。逆に、投資担当チームがどんなに素晴らしいシナジー効果があると約束していたとしても、現場の人たちの評価に直接影響しない場合、それを実現しようというモチベーションも著しく低下してしまいます。このようなギャップが、事業会社との提携における失敗の大きな要因の1つとなるのです。
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文=James Riney

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