「Do Schools Kill Creativity?(邦題:学校教育は創造性を殺してしまっている)」と題したこのトークで、ロビンソンは創造性を抑圧するのではなく育てるような教育改革という壮大なトピックを、わずか18分で語った。
ロビンソンは、巧妙なアニメーションやプレゼンのスライドを使うことなくオーディエンスを引き付けることができる才能ある講演者だった。彼がパブリックスピーキングで駆使したのは、ユーモアとストーリーテリングだ。
1. ユーモア
ロビンソンはあるインタビューで「相手が笑っていたら、話を聞いているということだ」と語っていた。ロビンソンは教育者として、聴衆の心が離れてしまったら誰も自分の考えを最後まで聞いてくれないことを知っていたのだ。
ロビンソンのTEDトークでは、早い段階から笑いが起きる。ここでは、ロビンソンのプレゼンの最初の5分間で特に大きな笑いが起きる3つの部分は次の通りだ。
「例えばディナーパーティーの席で、あなたが教育関係の仕事をしていると言ったとします。まあ実のところ、教育関係で働いている人はあまりディナーパーティーに行ったりしませんが。(中略)でも招待されて、誰かと話すとします。『お仕事は?』と聞かれ、『教育関連の仕事です』と答えると、相手の顔から血の気が引くんです。きっと心の中で『なんてこった! なんで私の隣に? せっかくのパーティーなのに!』なんて思っている」
「最近聞いたお気に入りの話をしましょう。絵の教室に通う6歳の女の子が、教室の後ろの方で絵を描いていました。(中略)先生は興味をひかれて女の子に『何を描いているの?』と聞きました。女の子は『神様の絵を描いているの』と言ったんです。『でも神様がどんな姿をしているかは誰も分からないでしょ』と先生が言うと、女の子『もうすぐ分かるわ』と答えたのです」
ロビンソンは最初の5分間で、聴衆から10回ほど笑いを誘った。1分に2回のペースで笑いを引き出したロビンソンの講演は、多くのコメディー映画よりも面白いものになった。
ロビンソンのユーモアは自虐的なものが多かった。自虐的なジョークは、やりすぎて信用を失わないよう気をつける必要はあるが、社会心理学の世界ではユーモアが聴衆の心をつかむことが分かっている。