例えば、米ニューヨーク市の公立学校教員13万3000人が加盟する「ニューヨーク市教員連盟」は、PCR検査などコロナ対策が整備されないまま9月に学校が再開されれば、ストライキも辞さないという姿勢を表明した。
学校が再開し、対面指導を実施すれば、学級内感染は避けられない。教職員や生徒の健康を守るための体制整備を求めたのだ。
最終的には、PCR検査などコロナ予防体制を強化し、学校再開を9月21日に11日間、遅らせることで合意したが、集団感染が発生すれば事態はどうなるかわからない。
コロナ対策の1つは検査体制の強化
これらの問題解決は、ワクチンの開発にかかっている。米疾病対策管理センター(CDC)は、各地の保健当局に対して、11月にコロナワクチンの接種を開始できるように準備することを指示しているが、これは現在進行中の第3相臨床試験の結果次第でどうなるかわからない。
最近、コロナの再感染が複数報告されている。一度、感染しても数カ月後には再感染するのだから、ワクチンの効果は限定的とみなすのが妥当だろう。現時点で、ワクチンの開発成功に過大な期待は抱かないほうがいいかもしれない。
現状で、確実にできるコロナ対策は限られている。その1つが検査体制の強化だ。特に無症状者への検査を拡大することだ。これは、コロナの性質を考慮すれば合理的だ。
8月6日、「米国医師会誌(JAMA)内科版」に、韓国のスンチョンヒャン(順天郷)大学の研究者たちが興味深い研究を発表した。彼らは、コロナ感染が確認され、隔離された303人の患者の経過を調べた。このうち110人が隔離時に無症状で、そのうち21人がその後に症状を呈した。残りの89人は一貫して無症状で、これは全体の29%に相当した。
意外だったのは、PCR検査で推定したウイルス量と、PCR検査が陰性化するまでに要する時間が、症状の有無に関わらず、変わらなかったことだ。
この事実は、無症状感染者も周囲に感染させることを意味する。ということは、無症状の人にはPCR検査を実施しないという日本の厚労省の方針は、医学的には不適切ということになる。
世界は日本とは対照的だ。臨床研究の成果を踏まえ、柔軟に対応している。8月19日、英国政府は、全人口を対象に、定期的に検査を実施する方針を表明している。