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現場からの医療改革


彼らが考えるもう1つの可能性は、インフルワクチンが免疫力全体を活性化し、インフルだけでなく、コロナに対しても免疫力を高めたことだ。これは結核予防のために接種されるBCGワクチンが、コロナに有用とされる機序と同じだ。

BCGについても、最近、ギリシャの医師たちから興味深い研究成果が報告された。彼らは65才以上の入院患者198人を対象に、退院時にBCGワクチンとプラセボを接種する群にランダムに振り分け、その後、1年間で感染症(主に呼吸器感染症)を発症する頻度を調べた。

中間解析の結果は興味深かった。感染症を発症したのは、BCG群で78人(25%)、プラセボ群で72人(42%)であり、その差は統計的に有意だった。BCG接種が感染症発症率を45%減らしたと言えそうだ。

もちろん、この試験は小規模で、さまざまなバイアスが影響している可能性がある。追試が必要だ。また、この試験はコロナが流行する前の2017年に開始されており、BCGワクチンのコロナへの有効性について証明されたわけではない。

この点については、オーストラリアで医療従事者を対象としたランダム化比較試験が進行中であり、その結果が出るのを待たねばならない。なので、現時点では、コロナ対策予防にBCGワクチンを推奨することはできない。

しかしながら、紹介した研究結果を総合的に判断すれば、今年はインフルワクチンを接種しておくほうがよさそうだ。特にリスクが高いのは持病を抱える高齢者だ。是非、主治医と相談して欲しい。

ただ、今年のインフルの流行については懐疑的な声もある。インフルは世界中を循環し、冬場に南半球から赤道を通って日本に流入もする。コロナの流行のため、海外との交流が激減している日本では、流行は小規模なものになるかもしれないと考える専門家もいる。

とはいえ、私は、このような楽観論は禁物と考えている。日本経済を考えれば、いつまでも海外渡航を制限するわけにもいかず、インフルの流入は避けられないからだ。

インフルは2019〜20年のシーズンは流行していないため、日本人の集団的な免疫力は低下している。一旦、流入すれば、大流行へと発展する可能性が高い。そうなれば、インフルワクチンの需要は高まり、品薄になるはずだ。

例年、早いところではインフルワクチンの接種は10月から始まる。確実に接種するためには、職場あるいは最寄りの医師に、いまから接種の予約をすることをお奨めしたい。

連載:現場からの医療改革
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文=上 昌広

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