「農業の未来は環境フットプリントを最小限に抑えることにある」。ケネス・サリヴァン最高経営責任者(CEO)はそう断言し、「当社にはその規模からして、先導していく責務がある」と力を込める。
実際、米4位の食肉加工業者であるスミスフィールドによる取り組みは、業界全体の変化につながる可能性もある。農業は米国の年間温室効果ガス排出量の1割を排出し、業界別では4番目に大きい排出元となっている。畜産は農業による排出量のほぼ半分を占め、とくに牛の畜産によるものが多い。
中国の万洲国際(WH)グループ傘下の同社はこの目標を、排出量を相殺するカーボンクレジットの購入に頼らずに、米国内の40工場全体で実現することをめざしている。これらの工場には全米最大規模の食肉加工工場も含まれる。
具体的には、▽豚にやる飼料を変えてメタン放出量を減らす▽自社で所有する農場で土地を耕さない不耕起栽培を導入し、土壌の健康を回復させる▽再生可能エネルギー事業を拡大する▽自社の流通経路を効率化する──といった方策を実施する。冷凍設備や照明、各種機器による電力消費量も「積極的に減らす」計画だ。
「ビッグ・アグリカルチャー(大型の農業生産)はその規模と範囲から批判を浴びることもあるが、大きな強みもある。たとえば、(環境対策などに)費やすことのできる資本(の大きさ)などだ」とサリヴァンは言う。スミスフィールドはこの20年で再生可能エネルギー事業に計5億ドル(約530億円)超を投じてきたという。
米国の環境シンクタンク、世界資源研究所(WRI)の専門家であるリチャード・ウェイトは、スミスフィールドがカーボン・ネガティブの目標期限を2030年としたのは「非常に野心的」だと評し、同年までに達成するには今から多くの取り組みを進めていく必要があると指摘している。