スウェーデンの新型コロナPCR検査事情。キットは「タクシーが配達」

2020年8月、スウェーデンのストックホルムで、3月の休校以来、初めて学校に行く学生たち(Getty Images)

Forbes JAPANで5月、6月、多くの反響を集めた「スウェーデンのコロナ対策」関連の記事に、スウェーデン在住の医師、宮川絢子博士に聞いた「スウェーデン新型コロナ「ソフト対策」の実態。現地の日本人医師はこう例証する」と「スウェーデンの新型コロナ対策は失敗だったのか。現地の医療現場から」がある。

宮川博士は、スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務の医師で日本泌尿器科学会専門医であり、スウェーデン泌尿器科専門医(スウェーデン移住は2007年)だ。

カロリンスカ大学病院はスウェーデンで最多の感染者、犠牲者を出したストックホルムにあり、国内で最多の感染者治療を行なった医療機関である。ピーク時には感染者の治療も担当した宮川博士に、現地のPCR検査事情についてご寄稿いただいた。


徹底したペーパーレス化、スマートフォン一つでPCR検査も


スウェーデンはIT先進国であり、ITが暮らしの至る所で活用されているが、新型コロナウイルス検査についても例外ではない。現在、国民は、スマートフォン一つあれば、PCR検査も抗体検査も簡単に予約し、受けることができるようになっている。

スウェーデンでは、民間、公的機関にかかわらず、ペーパーレス化が進んでいる。日常生活でも、各種支払い、確定申告、運転免許やパスポート、住民票の申請などはオンラインで行える。育休給付金、傷病給付金の申請や、医師の診断書、療養休暇申請のための診断書、死亡診断書などなど、オンラインで行えるものは数多い。

スーパーやレストランでも現金を扱わないところが増えたため、現金を持ち歩く人は激減した。デビッドカードやクレジットカードの使用だけでなく、スマートフォンがあれば銀行口座間の資金移動が可能なSwishでの支払いが増えた。パーソナルナンバーとスマートフォンの番号、銀行口座があれば使えるこのシステムは爆発的に広まり、急速にキャッシュレス化が進んだ。

パーソナルナンバーは、生年月日に4桁の数字を組み合わせた番号で、国税庁が出生時に交付する。下2桁目の数が偶数であれば女性、奇数であれば男性などの決まりがある。病院のカルテもパーソナルナンバーで管理され、検査記録や処方記録など全てパーソナルナンバーと紐付けされて保管される。パーソナルナンバーがあれば銀行口座を開設できるが、口座を開設すればBank IDを取得して本人認証に使える。

また、同様の本人認証をスマートフォンで行うこともできるが、これは、銀行口座をスマートフォンの番号と紐付けることで可能となるもので、mobile Bank IDと呼ばれる。mobile Bank IDを用いて、銀行口座間の送金を行うシステムがSwishであり、スウェーデンの主な銀行が共同で開発した。スマートフォンの番号同士で口座間の資金移動が手数料無料で可能である。
次ページ > Bank IDでカルテの閲覧も

文=宮川絢子 編集=石井節子

ForbesBrandVoice

人気記事