「共通の問い」を作ることの重要さ
さて、皆さんには、メンターと呼ばれる人がいるでしょうか?
ここでいうメンターとは、自分の指導者であり、導いてくれる存在、と定義しておきましょう。
たとえばですが、名作と呼ばれる映画や、漫画にはほぼ必ず、主人公を導いてくれるメンターと呼ばれる存在が出てくるものです。これはビジネスでも同じで、最近では『1兆ドルコーチ』がベストセラーになったように、経営者やビジネスリーダーにもメンターがつくことが一般的になってきました。
では、なぜこのメンターは必要で、彼らの役割とはいったいなんなのでしょうか?
『1兆ドルコーチ』の主役。「シリコンバレーのメンター」、スティーブ・ジョブズの恩師、ビル・キャンベル(GettyImages)
私は、それは「暗黙知を、形式知化するために、共通の問いを作ってくれること」であり、「臨床と研究のバランスを整えてくれること」ではないか、と考えています。
これは少しわかりにくいので補足しますと、たとえば「研修」をイメージしてみてください。優れた研修とは、「いい振り返り」の機会を作ってくれます。
この「いい振り返り」の機会とはいったい何か?というと、突き詰めると「共通の大きな問い」を提示してくれる、ということだと私は思っています。
たとえば、個人の振り返りのような研修であれば「なぜ、あの仕事はうまくいったのか? そこからなにを学んだのか? どうすれば他の人でも上手くコピーできるのか?」という問いを設定することで、現場で臨床だけをしていたメンバーが強制的に「研究」の場へと連れて行かれることになる。その結果、「感覚的にやっていたこと」が一般化され、再現しやすくなる、こういう構造です。
このように、いい振り返りには必ず「問い」が存在しています。
あるいは、他のケースもそうです。たとえば、開発部門と、現場部門が対立しやすい会社があったときに、その両者を融合させるためには、「共通の問い」が有効になりえます。
共通の問いとは、たとえば、「我々は何のために存在しているのか?」というビジョンのようなものかも知れませんし、「どうすればお互いにwin-winになれるのか?」というものかも知れません。これはケースバイケースですので、完璧な答えはありませんが、重要なのは共通の答えではなく、共通の問いである、ということです。
そして、それを上手にやってくれるのが「優れたメンターである」ということです。