ビジネス

2020.09.20

今こそ、暗黙知を形式知に。メンター必須の時代が来た

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一つ目は、単純に「平易な言葉」ではないから。形式知や暗黙知は、ビジネスリーダーであれば知っていることも多い単語でしょうが、現場の人からすると、聞いた時点で「???」となってしまいそうです。なんだか難しそうな響きです。

もう一つは「動詞」に落とし込んだ方が使いやすいから、ということです。私は普段、作家としても活動していますが、その中で、強い言葉の特徴というのは「動詞や、アクション」につながる言葉である、ということがあります。

たとえば、「知恵」よりも、「学習」。「ご飯」、よりも「食事」。という風に基本的に実利を目的とする限り、言葉はできるだけ「動詞」に近い方が強い、という原理原則があります(名詞や形容詞ではない、ということです)。

そして、この観点でいうと、「形式知」と「暗黙知」という言葉は、より動詞に近い言葉に落とした方が使いやすい、ということです。

では、なんといえばいいのか?

それは「臨床と研究」だと私は思います。より深堀りしていうならば、強い組織や良いキャリアとは「臨床と研究」のバランスが取れている、ということです。

どういうことでしょうか?

重要なのは「臨床」と「研究」のバランス


まず、言葉の定義について確認します。

臨床とは、いわずもがな、現場の話です。医療従事者であれば、患者と対面し、治療活動をすることを指しますが、ビジネスでいうと、現場の実践です。

一方で研究とは、新しいことの発見を行うための行為です。医療でたとえると、病気の原因や、新薬の開発などを突き詰めることですが、ビジネスでいうと、データを集めて分析し、企画や戦略に落とす、ということです。

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そして大事なのは、ビジネスこそ、この「臨床と研究」のバランスが実はとても重要だ、ということです。

反対にいうならば、チームや組織が「臨床だけ」や、「研究だけ」になると、成長は止まり、知識の平準化と進化は行われなくなってしまう、ということを指しています。

そして、当然ですが「形式知」を深めるのが、研究であり、「暗黙知」を深めるのが、臨床である、とも解釈できます。

あなたのチームは「臨床だけ」や、「研究だけ」になってはいないでしょうか? ぜひ少し考えて見ていただけると幸いです。

「臨床と研究」のバランス、どうやって──?


さて、ここまで聞いて、「まぁ、なんとなくはわかった。だからなに?」と思った方も多いかと思います。長々と前提を申し上げました。

重要なのは当然、どのようにするのか? どのようにビジネスにつなげるか? ですが、問題は、ほとんどの場合、「臨床」が得意な人は「研究」が苦手で、「研究」が得意な人は「臨床」が苦手だったりすることです。

つまり、組織が成長する上で「臨床と研究」のバランスを取ることはとても難しい、ということです。たとえば、研究(企画・制作)部門と、営業(販売)部門がぶつかりやすい、といったケースをイメージするとわかりやすいでしょう。

では、このようなケースではどのようにバランスを取ればいいのでしょうか?

結論から言いますと、それは「共通の問い」によって共有する、進化させる、ということだと私は思います。そして、そのときに役立つのがメンターと呼ばれる存在です。
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文=北野唯我

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