ビジネス

2020.09.10 17:00

デッドストック品に新しい命を 服を愛する「ビームス クチュール」のリメイク哲学


水上は、ブランドを立ち上げるときも、コラボレーション先を決める際も、「最初はビジネスのことは考えない。やったら絶対に面白いだろうなというところを重視しています」と言う。

いまでこそアップサイクルを行うブランドという、サステナブルの文脈で注目されることが多いビームス クチュールだが、まずは「ファッションを楽しむために」や「取り組みとして面白いかどうか」がいつも何かをスタートさせるときの原点であり、最重要事項だ。

他企業とのコラボレーションも、「一緒にやったら面白そう」と思う会社に、水上のほうから声をかけて実現することも多いという。

ジップロックとのコラボは米国にも波及


いまでは多くのファンが存在するジップロックとのコラボレーションも、水上が日本でジップロックを販売する旭化成ホームプロダクツに直接かけ合い、さらに本国アメリカで製造・販売を行うSCジョンソン社の許可をとって、2年越しで実現したものだ。商品のサンプルをつくってアメリカまで持って行き、交渉にも時間をかけた。

ついに2018年8月に日本で発売になると、その話題がアメリカのニュース番組でも取り上げられ、たまたまそれが本国の会社の担当者の目に留まり、翌年にはアメリカのセレクトショップFred Segalの店頭で販売され、ファッションアイテムとしてジップロックが使われている新鮮さが好評だったという。

「世界中で買えるようなシステムを整えて、今後もどんどん世界に出していきたい」と、水上は今後の展開について語る。

2020年7月下旬からは、Ziplocとのコラボレーションプロジェクトである「Ziploc RECYCLE PROGRAM」が始動した。

アイカサ
4者協業コラボ企画で生まれたビニール傘。傘は西武鉄道池袋線の池袋駅から飯能駅間に設置される

ビームス クチュールとジップロックの旭化成、使用済み製品を回収して新たな原料や製品に生まれ変わらせる米国発ベンチャーのテラサイクル、そして傘のシェアリングサービスを行うアイカサの4者協業で、ジップロックをリサイクルして作ったビニール傘を傘のシェアリングサービス「アイカサ」で運用する取り組みだ。

7月末からテラサイクルのサイトを通じてフリーザーバッグやコンテナーなどジップロック製品の一般回収を行っており、9月中旬からビームス クチュールがデザインを手がけて生まれ変わった傘が西武鉄道池袋線の沿線にシェア傘として設置される。

CO2の排出量が全産業界の10%を占め、世界で2番目の環境汚染産業とも言われるファッション業界。ゆえにブランドのサステナビリティへの取り組みに視線が集まる昨今だが、純粋な服への愛は図らずともそうした取り組みへと繋がるのかもしれない。
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文=河村優

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