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2020.09.10

デッドストック品に新しい命を 服を愛する「ビームス クチュール」のリメイク哲学

BEAMS COUTUREデザイナーにして、立ち上げ人の水上路美

在庫処分を余儀なくされるファッション業界の中で、捨てられるはずだった衣服や素材に、新たな息吹を与えているブランドがある。ビームス クチュール(BEAMS COUTURE)をご存知だろうか。

不動の人気を誇るセレクトショップ、ビームスのデッドストックや買い付けした古着を利用して、全て手仕事によるリメイクを施し、新たな洋服に生まれ変わらせるブランドだ。

商品は全てが異なるデザインで、世界で1着だけの個性豊かな一点物。通常アパレル業界では廃棄される運命の「デッドストック品」を用いるためアップサイクルの観点からも注目が集まっている。

意外な企業とのコラボレーションアイテムも話題となっており、なかでも旭化成ホームプロダクツが販売する「ジップロック」とのコラボ商品は、新作が出るとと毎回入手が難しくなるほどの人気だ。透明なあの袋の素材を生かしたトートバッグや財布、スマホケースなど、斬新なアイデアでジップロックを身につけるアイテムへと生まれ変わらせた商品を続々と発表してきた。

Ziploc
ジップロックのもつ透け感と、青とピンクの色合いがスタイリッシュかつ遊び心満載の商品は大きな人気を集めている。

さらに8月7日にニューヨーク発の食料品店ディーン&デルーカとジップロック、ビームス クチュールがコラボしたクーラーバッグが発売されると、販売開始後、即完売状態になったという。

このアパレル業界に新しい風を吹き込むビームス クチュールを立ち上げたのが、オリジナルアイテムや数々のコラボ商品のデザインを全て手がけている水上路美だ。

一点物にこだわるファッションホリックから、コラボアイテムを入り口とする層まで、幅広く支持され、躍進を続けるブランドの中心人物に迫った。

量産型から一点物へ


2017年10月にビームスの新ブランドとしてデビューしたビームス クチュール。それまで水上はビームス内のレーベル、レイ ビームス(Ray BEAMS)のデザインを10年以上手がけていた。

しかし、量産型のデザインを行ううちに、別の方向での服づくりにも興味をもつようになる。そして、師匠であるデザイナーの神田恵介からの「ビームスのデッドストックってどうなってるの?」という問いかけをきっかけに、かねてから頭にあった「デッドストック品をリメイクする」という構想が固まっていったという。
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文=河村優

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