鉄板焼の個室ではいよいよメインディッシュが登場する。国産の黒アワビは弾力があり肝まで濃厚。北海道日高群産の黒毛和牛「こぶ黒」(フィレとサーロイン)は肉の旨みたっぷりながら、脂は比較的さっぱり。7種類のバラエティーに富んだ薬味も手伝って、飽きることなくいただける。
東京ヒルトンホテル時代、ザ・ビートルズが宿泊した際に考案されたというディアブルソースも登場。そういった付随するストーリーまでが洗練されていて、濃厚な果実味と緻密なタンニンを持つケンゾーエステイトの赤ワイン「紫鈴rindo」もスイスイと飲み進めてしまう。
そして最後は寿司カウンターへ。重厚な檜のカウンター席につけば、緩んでいた背筋は再び伸び、気持ち新たに職人と向き合う。そして、白身(鰈)、青魚(真鯵)、赤身(本鮪とろ)、馬糞雲丹、穴子といった、こだわりの5貫を小粋にいただく。
宮城県産のササニシキを使ったシャリの程よい柔らかさとネタとのバランスを体感しながら、同じく宮城の純米大吟醸「勝山暁」を嗜めば、同郷の仲間に出会った時のような安堵感につつまれる。続いて、長野「真澄 夢殿 大吟醸」や愛媛「千代の亀 純米吟醸」も酒器を変えて登場するが、その3種飲み比べも楽しい。
胃も心も満たされながら「獺祭」の焼酎をお供に、旬のフルーツをメインとしたデザートでリフレッシュ。水辺の席で旅の余韻に浸りながら、この新しいスタイルの晩餐の魅力を振り返ってみた。
魅力1:場所を変えることによって生まれるエンターテイメント性
「その逸品に自ら会いにゆく」ワクワク感は、まるで冒険をしているようで、気づけば童心にかえっている。その一方で極上の天麩羅・鉄板焼・寿司を一度に楽しむというオトナの贅沢をも堪能できる。この両者を味わえる体験は希少であり、究極のエンターテイメントと言えるのではないか。
魅力2:老舗ホテルだからこそ味わえる、安心感とホスピタリティー
周遊プランと言っても、シェフやスタッフのきめ細やかなサービスや、心温まるおもてなしは健在。1組ずつの移動となるため、「密」となる状況も皆無で、移動しつつもゆったりとした時間を過ごすことができる。
魅力3:マリアージュで日本を知る
ペアリングは、日本酒はもちろん、ワインも日本に縁があるラインナップで構成。注目の女性醸造家 三澤彩奈氏が山梨で醸す「キュヴェ三澤」、そしてカプコン創業者の辻本憲三氏がカリフォルニアで手掛けるケンゾーエステイトの「あさつゆasatsuyu」&「紫鈴rindo」など、日本に縁ある美酒の提案は、自国の酒を見つめなおすきっかけになるかもしれない。またノンアルコールのペアリングも魅力的だ。
魅力4:随所で「芸術の秋」を愉しむ
旅の途中に思いがけないアートとの出会いがあったりするのも、このプランの醍醐味。移動中には、北大路魯山人、篠田桃紅、荻野丹雪、棟方志功といった著名な芸術家の作品を鑑賞することができ、食体験をより奥深いものへ昇華させてくれる。
北大路魯山人の手彫りの作品といわれる「やどや」の看板
旅のチケットの価格はひとり5万円(ペアリングはプラス2万円/ノンアルコールのペアリングはプラス8265円)。1組4名までで1日限定3組に限られるプレミアムな体験となっている。世の中の価値観がガラリと変わった、去年とは違う2020年の秋。節目を迎えた「ザ・キャピトルホテル 東急」が、意を決してナビゲートする、美食の旅へと出かけてみてはいかがだろう。
問い合わせ:ザ・キャピトルホテル 東急
https://www.tokyuhotels.co.jp/capitol-h