ネット時代に適合した「時間」とは?

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インターネット時代の時間とは


現在の世界時は原子時計(70億年で1秒の誤差しかないものもある)で運用されており、時間の精度は、長さの単位であるメートルの定義(真空中で光が2億9979万2458分の1秒に進む距離)や、GPSによる位置検出の精度にも影響している。

そしていまや世界を一つに結んだインターネットも、原子時計でコンピューター同士の動作を同期させて一体として動いており、日本では情報通信研究機構のサイトをアクセスすれば日本標準時の現時刻を知ることができる。

メートルについては近代の合理性を象徴するように10進法で表すことになったが、時間については1日/24時間、1時間/60分、1分/60秒と24進法と60進法が混在している。フランス革命の頃には、メートルと同じように時間も10進法を基本に、1週を10日、1日を10時間、1時間を100分、1分を100秒とし、すべての月を30日とする革命暦が制定されたが、人々の生活習慣と馴染まずに普及することはなかった。

ところが1998年に、なんとスイスの時計会社Swatch(スウォッチ)がインターネットの時代に相応しい全世界共通の時間単位として、1日を1000のbeat(ビート)という単位に分割して表すSwatch beatを発表した。そして当然のことながら、この時間を表示する時計も発売し、ロシアからbeatを発信するBeatnikという衛星を打ち上げる計画までぶちあげて、大々的なキャンペーンを展開した。


SwatchグループCEOのニコラス・ハイエク・ジュニア。着けている腕時計の一つがSwatch初のデジタルモデルであるSwatch .beat(2000年2月)(Photo by Martin Chan/South China Morning Post via Getty Images)

現在の世界時の基点はイギリスのグリニッジだが、Swatch beatはスイスのSwatch本社のあるビール市(Biel)から始まり、本社が現在の0時0分になるタイミングが@0で(beatの時間には@を付ける)、正午が@500という具合で、1beatは現在の時間で言えば86.4秒にあたる。

一つの単位で単純に計測できるので、時間の差や比率などを簡単に求めることができ、インターネットの上で何かイベントを仕掛ける場合も同期を取りやすい。

しかし、日本では0時が@666から始まることになり、日常生活と連動するのは難しい。当初はいくつかの啓蒙イベント等が行われたものの、結局はネット社会でも受け入れられることもなく、いまではSwatchのマーケテイング戦略に過ぎなかったとされている。

ところがまた2018年になってFacebookが1秒を7億560万に分けた、flickという単位を発表していた。これはコンピューターのソフトの動作タイミングを決めるのに有用な微小な時間の単位で、実生活には影響はないが、いずれもっとネット社会が進化した段階で、われわれの知る時間の表現も変化するかもしれないと思わせる。
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文=服部 桂

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